【企業担当者向け】5日取得義務の有給休暇義務化とは?基準日や対応方法を丁寧に解説

【企業担当者向け】5日取得義務の有給休暇義務化とは?基準日や対応方法を丁寧に解説

 2019年4月に施行された法改正によって、年5日の有給休暇の取得が義務化されました。労務担当者の皆さんは、有給休暇義務化について法改正の内容などをしっかり覚えていますか?

「有給休暇義務化についてあまり覚えていない…」
「良く知らないけれど言葉だけは知っている」
という方は、今一度有給休暇義務化についておさらいしていきましょう。正しい対応で従業員の有給休暇取得をうながしていきたいですね。
この記事では、有給休暇義務化について詳しくご紹介します。
ぜひ、参考にしてくださいね。

更新日:2024年2月29日

  • 個別指定方式
  • 計画年休制度
  • 有給休暇の第一基準日について
  • 有給休暇の第二基準日について

有給休暇義務化とは?

有給休暇は、法律の一定条件を満たす労働者に対して、会社が与える必要のある休むための権利の事です。
労働基準法では、有給休暇を取得できる労働者の条件は以下のようになっています。

  • 仕事を開始してから6ヶ月以上継続して雇われている
  • 全労働日の8割以上出勤している
この二つを満たしていると、10日間の有給休暇を取得することが可能です。

2019年の4月からは、この二つの条件が合う労働者に対して、全ての企業が年5日の有給休暇を与えなければならないというルールが有給休暇義務化で定められました。

この規定のポイントは主に以下の通りです。

  • 対象者は有給休暇が10日以上付与される労働者(管理監督者を含む)に限る
  • 使用者は、労働者ごとに初めて有給休暇を付与した日を基準日として、その日から1年以内に5日間の有給休暇を取得させることが義務となる。その取得時期は、時季指定の場合であっても、労働者の意見を尊重するよう努めなければならない。つまり、年度始めの4月から3月までという計算ではない
  • 有給休暇を5日以上取得済みの労働者に対しては、使用者による時期指定は必要ない
ここで注目したいのは3つ目のポイントです。

既に10日以上の年次休暇がある労働者が1年に5日以上の有給休暇を取得している場合は、企業側が有給休暇の取得する日を指定する必要がないのです。そのため、既に年間5日以上の有給休暇を取得できる風土がある企業は、有給休暇義務化で心配する必要はないでしょう。

しかし、全従業員が必ず1年で5日間有給休暇を取得しなくてはいけないので、従業員の有給休暇取得状況を把握しておくことが大切です。

有給休暇義務化に対する会社の対応方法

有給休暇義務化に対応するためには、個別指定方式と計画年休制度の導入の二種類の方法が考えられます。それぞれの方法を見ていきましょう。

個別指定方式

個別指定方式は、会社で労働者一人ひとりの有給休暇取得日数を確認し、有給休暇が5日未満になっている労働者に対し、会社が有給休暇取得日を指定するという方法です。
例えば、会社の就業規則で「基準日から1年間の期間が終わる1ヶ月前までに有給休暇が5日未満の従業員に対して会社が有給休暇を指定する」と定め、実行していきます。

個別指定方式の大きなメリットは、会社による指定の柔軟性が高いという点です。
会社と労働者が話し合いをして指定日を決めることができるので、労働者にとっては希望日に有給休暇を取得でき、満足度を高められます。
個別指定方式のデメリットは、労働者の個別管理が必要となり、手間がかかるという点です。会社が全労働者の有給休暇取得日数を把握し、基準日から1年の期間の終了日が近くなるタイミングで、有給休暇の取得を促す必要があります。


個別指定方式は、有給休暇取得日数が1年で5日以上の労働者が多く占める会社に向いていると言えるでしょう。

計画年休制度

計画年休制度は、会社が労働者の代表との労使協定によって、各労働者の有給休暇のうち、5日間を超える部分についてあらかじめ日にちを決めるという方法です。

計画年休制度を会社が導入し、年間で5日以上の有給休暇を与えることにより、有給休暇取得日の指定義務の対象外になります。計画年休制度はいろいろなパターンがあり、全社で一斉に特定の日にちを有給休暇にしたり、部署ごとで有給休暇を取得する日を分けたり、有給休暇を取得する日にちを一人ずつ決めることもできるのです。

計画年休制度のメリットは、労働者を個別に管理する手間や時間が無くなる点です。
労使協定によって定めるので、個別の労働者ごとに有給休暇取得日数を把握したり、有給休暇取得を促したりする必要がありません。


計画年休制度の考えられるデメリットは、労働者代表または労働組合と話し合って労使協定が結ばれるため、会社側の都合によって有給休暇取得日程を変えることができないという点です。

そのため、何か緊急事態が発生しても、労働者が有給休暇を取っていて会社に労働者がほとんどいないという事態も起こりうるのです。


会社は、休暇にしても業務に支障が生じにくい日の見通しが立てにくく、後で有給休暇の日にちを変更する必要が出てくる可能性がある場合は、計画年休制度を導入することは困難でしょう。

計画年休制度は、現状で有給休暇取得日数が年に5日以上の労働者が少ない会社に向いています。

中小企業と大企業の違い

有給休暇義務化は、中小企業と大企業で違いがあるので詳しく見ていきましょう。

まずは、中小企業と大企業の違いについてご紹介します。中小企業基本法で定義されていることは主に二つで、その一つが社員数です。
社員数は、企業に現在どれくらいの人を雇っているのかを表します。
基本的に、社員数が300人以下かどうかで中小企業か大企業かに分けられます。
しかし、業種によっては社員数が100人や50人など、さらに人数が少なくなる場合もあります。

また、資本金の額と出資の総額でも中小企業と大企業かが分かれます。社員数を同様に、これらが多ければ多いほど規模が大きくなります。
資本金の額と出資の総額は、基本的に3億円以下となります。
また、社員数と同じように1億円以下や5千万円以下など基準が下がる場合もあるのです。資本金の額や出資の総額、もしくは現在在籍している社員数のどちらかを満たしている場合に中小企業となります。

有給休暇の義務化は中小企業も2019年4月から始まっているため、未対応の企業はすぐに対応する必要があります。

基準日について

労働基準法を適用すると、正社員やフルタイム労働者の雇い入れ日から6ヶ月経った日に、それまでに8割以上出勤している労働者に10日の有給休暇を付与することになりますが、この有給休暇を付与する日を「基準日」や「法定の基準日」と呼びます。

この基準日から1年が経過すると、1年間に8割以上出勤している労働者に対して、継続勤務年数に応じて新しく有給休暇が与えられることになります。このように、労働基準法で決められた方法では、労働者一人一人の有給休暇を雇い入れ日ごとに別々に管理する必要があります。

継続勤続年数
0.5年
1.5年
2.5年
3.5年
4.5年
5.5年
6.5年以上
有給最大付与日数
10日
11日
12日
14日
16日
18日
20日
※一度取得して消化しきれなかった有給休暇は翌年に持ち越すことができるのですが、翌々年には消滅してしまうので気を付けましょう。

有給休暇の第一基準日について

企業によっては、雇い入れた日から6ヶ月経過した基準日ではなく、雇い入れた日から基準日までの間も会社を休まなければいけない事態に対し、一定の有給休暇日数を認めています。

例えば、雇い入れた日にあらかじめ5日の有給休暇を付与し、雇い入れの日から3ヶ月後に追加して5日の有給休暇を付与するとします。この場合、有給休暇を付与した日数が10日に到達した日を第一基準日として、この日から1年間が年次有給休暇を少なくても5日間取得させる義務期間となるのです。

しかし、第一基準日の前に有給休暇を取得している場合は、その有給休暇の日数は取得義務5日間の内数として差し支えありません。

例えば、第一基準日までに2日間の有給休暇を取っている場合は、第一基準日からの1年間は既に2日の有給休暇を取っていることとして、後3日間の取得で足りることになるのです。

有給休暇の第二基準日について

雇い入れの日がばらばらの場合は、労働者一人一人に基準日があることになり、その基準日やそれから1年間経過した日ごとに、労働者一人一人の有給休暇を管理する必要がある複雑化が生まれます。

そのため、雇い入れの日がいつであっても、翌年度以降は全社員の年次有給休暇を決められた日に一斉付与する方法を取る企業が少なくないのです。

例えば、雇い入れの日がいつであっても、翌年度以降は勤続年数に従った有給休暇を4月1日に一斉付与する方法です。この一斉付与した日を第二基準日と呼びます。

勤怠システムやシステム運用で適切に従業員の有給を管理していこう

従業員の有給休暇取得を促していく際に注意したいのが、年次取得日数の正確な管理です。

  • 有給申請をもらったものの、勤怠や給与計算にきちんと反映していなかった。
  • 多くの社員からの申請処理で業務が煩雑になり、いつ・何日取得したかの管理が大変になってしまった。
このように、労務担当者の業務負担がますます増えてしまうようでは、せっかくの有給休暇促進も働き方改革につなげることができません。
そこで、取得申請から実際の給与計算反映までをスムースに反映できたり、社員情報をデータベース管理することが可能な勤怠システムや、人事管理ツールを利用していくことがお勧めです。
日本シャルフが提供する「社労法務システム」「Esia-Zero」では、勤怠システムのKING OF TIMEやTouch On TimeとAPI連携することが可能です。勤怠情報取得から、給与計算、従業員の有給休暇取得日数までスムーズに管理していくことができます。

有給休暇管理をきっかけに、新たなツール導入を検討しても良いかもしれませんね。

まとめ

年次有給休暇の年5日取得はしっかり理解できましたか?
会社で働く労働者で有給休暇義務化についてあまり知らないという方は、今一度おさらいしておく必要があります。
従業員の有給休暇取得促進をはかり、適切な労働環境を用意できるようにしていきましょう。

HR-GET編集部

 HR-Get(エイチアールゲット)は、創業から30年以上にわたり、社会保険労務士の方や、企業の労務ご担当者様向けにシステムを開発・提供・サポートをしている株式会社日本シャルフが運営するWEBメディアです。
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