【企業担当者向け】裁量労働制とは?メリット・デメリット、フレックス制度との違いも徹底解説!

【企業担当者向け】裁量労働制とは?メリット・デメリット、フレックス制度との違いも徹底解説!

最終更新日:2023年9月29日

ニュースや新聞で話題になっている「裁量労働制」。
名前は聞いたことがあっても、詳しくは知らないという方も多いのではないでしょうか。

裁量労働制は、会社員の働き方に関わる非常に重要なキーワードです。そこで今回は、裁量労働制について会社視点、従業員視点でのメリット・デメリットを詳しくご紹介します。気になる方は、ぜひ参考にしてくださいね。

裁量労働制とは?

裁量労働制とは、みなし労働時間制の一種であり、労働時間が労働者の裁量に委ねられている労働契約の事を言います。簡単に言うと、労働者の労働時間が長くても短くても、実際に勤務した時間とは関係なく、契約した労働時間分働いたことにするという制度です。例えば、裁量労働制の契約でみなし労働時間を1日8時間とした際、実際に働いた時間が5時間であろうと10時間であろうと契約した8時間働いたことにされ、給与に反映されるのです。

裁量労働制には時間外労働という概念がないので、労働者保護の観点から労働時間に関わる取り決めがあったり、適用される職種が限られたりする面があります。また、裁量労働制は時間管理が働く個人に任せられるので、勤務時間帯が決められず、出退勤が自由という特徴があります。

裁量労働制の対象業務は、以下の二種類に分けられます。

専門業務型裁量労働制 

(1) 新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務
(2) 情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であつてプログラムの設計の基本となるものをいう。(7)において同じ。)の分析又は設計の業務
(3) 新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送法(昭和25年法律第132号)第2条第4号に規定する放送番組若しくは有線ラジオ放送業務の運用の規正に関する法律(昭和26年法律第135号)第2条に規定する有線ラジオ放送若しくは有線テレビジョン放送法(昭和47年法律第114号)第2条第1項に規定する有線テレビジョン放送の放送番組(以下「放送番組」と総称する。)の制作のための取材若しくは編集の業務
(4) 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
(5) 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務
(6) 広告、宣伝等における商品等の内容、特長等に係る文章の案の考案の業務(いわゆるコピーライターの業務)
(7) 事業運営において情報処理システムを活用するための問題点の把握又はそれを活用するための方法に関する考案若しくは助言の業務(いわゆるシステムコンサルタントの業務)
(8) 建築物内における照明器具、家具等の配置に関する考案、表現又は助言の業務(いわゆるインテリアコーディネーターの業務)
(9) ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
(10) 有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務(いわゆる証券アナリストの業務)
(11) 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
(12) 学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る。)
(13) 公認会計士の業務
(14) 弁護士の業務
(15) 建築士(一級建築士、二級建築士及び木造建築士)の業務
(16) 不動産鑑定士の業務
(17) 弁理士の業務
(18) 税理士の業務
(19) 中小企業診断士の業務
※現行

企画業務型裁量労働制 

1 本社・本店である事業場
2 1のほか、次のいずれかに掲げる事業場
(1)  当該事業場の属する企業等に係る事業の運営に大きな影響を及ぼす決定が行なわれる事業場
(2)  本社・本店である事業場の具体的な指示を受けることなく独自に、当該事業場に係る事業の運営に大きな影響を及ぼす事業計画や営業計画の決定を行っている支社・支店等である事業場
※ 個別の製造等の作業や当該作業に係る工程管理のみを行っている事業場や本社・本店又は支社・支店等である事業場の具体的な指示を受けて、個別の営業活動のみを行っている事業場は、企画業務型裁量労働制を導入することはできません  
※現行

※2024年4月以降制度見直しの為、裁量労働制の導入・継続には新たな手続きが必要となります。

会社視点、従業員視点でのメリット・デメリット

次に、裁量労働制のメリットとデメリットを会社視点と従業員視点から見ていきましょう。

会社視点から見たメリット

人件費のコストが管理しやすい

裁量労働制の大きなメリットは、人件費のコスト管理がしやすいという点です。
それは、裁量労働制を導入した際、会社が始めに定めた時間を従業員が働いたとみなして給与を支払うからです。しかし、深夜出勤や休日出勤がある際、さらにプラスで残業代を支払うことになるため、上振れする可能性があるのですが、ある程度固定で人件費を算出できるという点は、コスト管理がしやすくなります。

社員の生産性が上がるので人件費を削減できる


従業員の生産性が上がり、結果的に人件費を削減できるという点もメリットと言えるでしょう。
実労働時間に合わせて給与を払うと、生産性が低く長時間働く従業員には、その分多くの給与を支払うこととなります。そのため、従業員としても仕事をできるだけ早く終わらせるモチベーションにはならないでしょう。

しかし、裁量労働制はこれまでの制度と比較して残業代が出ず、早く仕事を終わらせればその分早く帰宅できるという魅力があり、従業員にとっても生産性を上げるきっかけになります。

会社視点から見たデメリット

労働管理が困難になる


裁量労働制は、従業員が自分の好きな方法で自由な時間働くことになるため、労働管理が困難です。
会議の設定なども難しくなる点はデメリットと言えるでしょう。

次に、従業員視点からのメリット・デメリットを見ていきましょう。

従業員視点から見たメリット

労働時間を短くできる

裁量労働制は、ある程度の仕事の成果が求められます。これまでの働き方では自分の仕事が終わっても8時間程度会社にいることが求められていました。しかし、裁量労働制では自分がPDCAを回して短時間で仕事を終わらせられれば、その分早く帰れるのです。これは大きなメリットですよね。

仕事の自由度が高まる

裁量労働制では、仕事の自由度が大きく高まります。出勤時間や退勤時間が自分で決められるので、自分の生活スタイルに合わせて働くことが可能です。

従業員視点から見たデメリット

残業代が出ない

裁量労働制は、仕事が立て込んでいるときでも業務遂行に時間がかかっているときでも、休日労働と深夜労働以外は残業代が出ません。(ただし、1日のみなし労働時間がそもそも8時間を超えて設定されている場合は、8時間を越えた分の残業代がでます。例:9時間をみなし労働時間として設定されていたら、1時間は残業代の割増賃金がつきます。)
会社で慢性的な長時間労働を生み出している場合は、従業員の不満が溜まるだけではなく、心身の健康にも支障が出るでしょう。

従業員に高い自己管理能力が求められる

裁量労働制は、自分で生産性を上げられれば良いのですが、自分でPDCAを回せず、生産性を上げることができなければ長時間労働を必然的にしなければならないというデメリットがあります。その結果、従来の制度と比べて残業代が出ないので、労働時間に対して収入が減少してしまうのです。

フレックス制度との違いは?

一見すると、裁量労働制はフレックス制度と似ているように感じますよね。

フレックス制度とは、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が 日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度です。管理上コアタイムを定めている会社も多く、そういったところでは、コアタイムに就業していれば、出勤時間や退勤時間を自由に決められるようになっています。ただし、総労働時間は従業員の裁量に任せられておらず、会社規定の労働時間を守る必要があります。

ここからは、そんなフレックス制度と裁量労働制の違いを見ていきましょう。

対象となる職種の範囲が異なる

裁量労働制とフレックス制度は、対象の職種の範囲が違います。フレックス制度は対象職種の制限がなく、全社員に対して平等に適用することが可能です。しかし、裁量労働制は特定の職種だけに適用されるのです。

導入手続きが異なる

裁量労働制とフレックス制度は、その導入手続きが異なります。フレックス制度を導入する場合、会社の就業規則に始業と就業時間を労働者の決定に委ねることを記載し、清算期間が1か月を越えなければ労使協定を締結することで導入することができます。(清算期間が1か月を超える場合には、労使協定の届出が必要です)

しかし、裁量労働制の導入手続きはより複雑です。裁量労働制は、専門業務型裁量労働制の場合、労使協定を締結したうえで労働基準監督署に届け出を出さなければなりません。企画業務型裁量労働制の場合は、労使委員会の4/5以上の賛成による決議と、同決議の労働基準監督署への届け出、対象労働者の同意が必要です。まずは、労働者側が半数を占める労使委員会をつくり、厚生労働省で決められたルールに沿って継続的に委員会を運営する必要があるのです。

給与の支払い方が異なる

給与の支払い方も、裁量労働制とフレックス制度では異なるので注意が必要です。フレックス制度は、あくまで従業員の労働時間に応じてその給与が支払われます。残業代も、清算期間を通して法定労働時間の総枠を超えて労働したものについては支払う必要があります。しかし、裁量労働制は実際に働いた時間ではなく、みなし労働時間によって給与が支払われます。みなし労働時間より短く働いても長く働いても給与が変わらないので、想定した成果に対して、始めに決められた固定の報酬が支払われるという成果主義の色合いが濃くなるのです。

36協定との関係は?

では、裁量労働制と36協定の関係はどのようなものになるのでしょうか。ここからは、裁量労働制と36協定の関係についてご紹介します。

36協定について

36協定は、時間外・休日労働に関する協定届のことです。法律の労働基準法第36条によって、会社は法定労働時間を超える時間外労働および休日出勤などを命じる場合、労働組合などと書面による協定を結び、労働基準監督署に届け出ることを義務付けられています。

裁量労働制と36協定の関係

会社が裁量労働制を取り入れる場合でも、みなし労働時間が1日8時間の法定労働時間を超える場合は、36協定を締結する必要があります。 また、法定労働時間を超える労働時間については、36協定の上限時間が適用されるため、みなし労働時間もこの時間を超えないことが求められるのです。

36協定の上限時間も注意!

みなし労働時間を定める場合は、36協定の上限時間も気を付けましょう。36協定では、労働者の残業時間は月45時間まで、年間で360時間までと決められています。例えば、一ヶ月の平均出勤日数が20日でみなし労働時間を10時間にした場合、月の残業時間は40時間となり、36協定の月の残業上限時間はクリアしています。しかし、年間の残業時間は480時間となるので、36協定の残業上限時間を超えているのです。みなし労働時間は限定的な時間ではなく、定常的な労働時間を決めるものなので、この場合、10時間のみなし労働時間は適正ではなくなります。

まとめ

裁量労働制について詳しく知ることはできましたか?

裁量労働制は、会社側にとっても労働者側にとっても魅力的なメリットだけではなく、いくつかのデメリットがあります。また、裁量労働制はフレックス制度とよく似ていますが、対象の職種が違うなど、大きく異なる点があるので注意しましょう。裁量労働制は従来の時間帯で働く労働形態とは異なり、特殊な労働形態になります。しかし、裁量労働制の導入要件は非常に厳しく、同制度の下でも排除できない法律上の規律もあるのです。

裁量労働制は、従業員の長時間労働につながることがないように注意しながら、うまく活用することが大切です。

HR-GET編集部

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