扶養控除(異動)申告書とは?出さないとどうなる?【令和3年度をわかりやすく】

扶養控除申告書とは?
所得税の扶養控除等の控除を受けられる
年末調整時に必要となる
- 配偶者控除や配偶者特別控除を受けるための配偶者控除等申告書
- 生命保険や地震保険、社会保険
- 小規模企業共済掛金などの控除を受けるための保険料控除申告書
控除対象でなくても扶養控除申告書を提出する必要がある
扶養控除申告書の根拠となる法律
扶養控除申告書は、所得税法と地方税法を基にして行われます。根拠となる法律は次の通りです。
・所得税法第194条
・所得税法施行令第316条の2
・所得税法施行規則第73条、73条の2
・所得税基本通達194~198共-3
・地方税法第45条の3の2、第317条の3の2
・地方税法施行規則第2条の3の2、第2条の3の3
先述の通り、扶養控除申告書は個人住民税の「給与所得者の扶養親族申告書」と統一された様式になります。それは上記の地方税法に基づいたものです。
扶養控除申告書の提出期間
扶養控除申告書の書き方
■必要な扶養控除申告書を確認する
その他、必要な申告書類
扶養控除申告書を提出する際、内容によっては添付書類を求められることがあります。
勤労学生の場合
勤労学生として所得控除を受ける場合、学校から交付される証明書を提示する必要があります。ただし、学校教育法によって設置された学校に通っている場合は不要です。国、地方公共団体などに準ずる一定の者により設置された専修学校や各種学校、職業訓練校などに通っている場合のみ、提示が求められます。すでに年末調整で勤労学生控除を受けている場合は、提示しなくも問題ありません。
障害者控除を受ける場合
障害者控除を受ける人が、非居住者の親族である場合は注意が必要です。送金関係書類、および親族関係書類を提示する必要があります。
送金関係書類とは、非居住者の親族に対して、給与所得者が送金した事実を証明する書類です。主に次のものを指します。
- 金融機関が発行した書類、またはその写し
- クレジットカード会社が発行した書類、またはその写し
親族関係書類については、次の項目で説明します。
親族関係を証明する書類
障害者控除と同様に、扶養控除といった所得控除を受ける人が非居住者の親族である場合には、送金関係書類および親族関係書類を提出する必要があります。
親族関係を証明する書類とは、非居住者の親族が給与所得者の親族であることを証明するもので、以下のものをいいます。
- 日本国もしくは地方公共団体が発行した公的な書類、および非居住者親族のパスポートの写し。
- 戸籍謄本、出生証明書、婚姻証明書など、外国政府または外国の地方公共団体が発行した書類(氏名、生年月日、住所または居所が確認できるものに限る)。
参考:国税庁「国外居住親族に係る扶養控除等の適用について」
■住所地を確認する
■扶養親族の年齢は年末時点
扶養控除申告書では、控除対象扶養親族や障碍者の数、寡婦、勤労学生などの確認を行いましょう。申告する控除対象扶養親族や障碍者などが、控除対象になるかどうかチェックすることが大切です。
扶養親族および控除対象扶養親族
控除額はその年の分の合計所得金額から控除対象扶養親族一人につき38万円となります。
特定扶養親族
特定扶養親族は、控除対象扶養親族の中で年齢が19歳以上で23歳未満の人を指します。控除額はその年の分の合計所得金額から控除対象扶養親族一人につき63万円となります。
・老人扶養親族
老人扶養親族は、控除対象扶養親族の中で年齢が70歳以上の人を指します。控除額はその年の分の合計所得金額から控除対象扶養親族一人につき48万円となります。
・同居老親親族
控除額はその年の分の合計所得金額から控除対象扶養親族一人につき58万円となります。
・障害者
これらの控除額は、障害者一人につき27万円、特別障害者一人につき40万円、同居特別障害者一人につき75万円となります。
・寡婦、ひとり親控除
・総所得金額等が48万円以下の「生計を一にする子」がいる
・勤労学生
控除額はその年の分の合計所得金額から27万円となります。
■障害者の扶養親族欄は人数を記入する
■16歳未満の障害者は扶養控除対象になる
■所得の見積額は控除後の所得を記入する
■配偶者特別控除
■年金受給者の場合の処理について
また、遺族年金や障害年金は非課税になるので、所得見積額は0円と記載しましょう。
■記入ミスを減らすコツを紹介!
扶養控除申告書は1年に1回記入するだけなので、あまり深く考えず記入する人もいるでしょう。
しかしミスがあった場合は、本来控除対象でも対象外になる恐れがあります。労務担当の方は提出前に、以下のポイントをもう一度チェックしましょう。
- 控除対象扶養親族の条件に該当しているか、記載事項に抜けがないか確認する。
- 「所得の見積額」を記入する際、計算間違いがないか確認する。
【扶養控除申告書を出さないとどうなる?】
■毎月天引きされる税金が高くなる
必ず、甲欄で計算される税金<乙欄で計算される税金となるのです。
■年末調整で税金が精算できなくなる
各欄の記入方法を解説
ここからは、扶養控除等申告書の具体的な記入方法を見ていきましょう。申告書には聞き慣れない単語も出てくるため、内容を正確に把握しないまま記入するとミスのもとです。それぞれ何を書けばいいのか、誰が記入すべきなのか、記入する時の注意点や間違えやすい点などを解説します。以下の8パートごとにチェックしていきましょう。
各欄 |
記入 する人 |
記入の 必要な人 |
個人番号欄 |
個人 |
全員 |
給与の支払者の法人(個人)番号欄 |
法人 |
全員 |
老人扶養親族欄 |
個人 |
昭和27年1月1日以前に生まれた70歳以上の扶養親族 |
所得の見積額欄 |
個人 |
全員 |
非居住者である親族欄 |
個人 |
現在まで引き続き1年以上国内に住所を持たない人 |
生計を一にする事実欄 |
個人 |
費用の送金などをしている人 |
左記の内容欄の記載事項(障害者又は勤労学生に変更) |
個人 |
障害者又は勤労学生 |
住民税に関する事項欄 |
個人 |
16歳未満の扶養親族がいる人、国内に住所がない人 |
個人番号欄(マイナンバー)
個人番号とはマイナンバーのことです。給与所得者本人、控除対象となる配偶者、扶養親族等の個人番号を記載する必要があるので準備しておきましょう。前年と変更がないからといって、記載を無視することはできません。
一般的には給与所得者が記載します。しかし、給与所得者等の個人番号を、給与支払者があらかじめ印字して交付し、給与所得者本人が確認して合意の上で提出するという方法も可能です。
また、給与支払者が給与所得者等の個人番号をまとめた帳簿を備えている場合には、記載を不要とすることができます。
給与の支払者の法人(個人)番号欄
給与支払者の法人(個人)番号は、給与支払者つまり会社側が付記するものなので、給与所得者はなにもしなくて大丈夫です。
給与支払者は、給与所得者から扶養控除等申告書を回収した後、税務署長から提出を要求されるまでの間に付記しましょう。
給与支払者が法人の場合は、法人番号をあらかじめ印字して給与所得者に交付しても問題ありません。
老人扶養親族欄
老人扶養親族とは、昭和27年1月1日以前に生まれた70歳以上の扶養親族を指します。以下の該当する欄にチェックを入れましょう。
・「同居老親等」にチェック
給与所得者本人または配偶者いずれかの直系尊属であり、普段から同じ家で生活を共にしている場合
・「その他」にチェック
上記以外の場合
所得の見積額欄
所得の見積額とは、収入金額から必要経費等を差し引いた金額です。所得が給与だけの場合は、収入金額から給与所得控除を引いた額になります。間違えて収入金額をそのまま記入しないよう気をつけましょう。
計算した結果、以下の場合は控除対象となりませんので注意してください。
・給与所得者の配偶者で、見積額が95万円を超える場合
・給与所得者の扶養親族で、見積額が48万円を超える場合
非居住者である親族欄
非居住者とは国内のどこにも住所を有さず、現在まで引き続き1年以上国内に住所を持たない人です。非居住者の親族を、国外居住親族とも言います。これにあたる場合は〇を記入します。
なお、親族の範囲は6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族を指します。
生計を一にする事実欄
控除対象の扶養親族が非居住者である場合は、その親族に送金したお金の合計額を記入します。
「生計を一にする」とは、日常生活のお金を共にしていることです。たとえば、一緒に住んでいなくても、生活費、教育費などを常に送金している場合は「生計を一にする」ものとして扱われます。
左記の内容欄(障害者又は勤労学生に変更)
令和2年までは「左記の内容」欄でしたが、令和3年から変更して「障害者又は勤労学生の内容」欄になりました。以下の内容を記載します。
・障害者(特別障害者)の場合
該当する事実を記入します。たとえば障害の状態、交付を受けている手帳の種類や交付年月日、障害の程度(障害の等級)などです。
・勤労学生の場合
学校名と入学年月日、所得の種類と見積額を記入します。
住民税に関する事項欄
「住民税に関する事項」欄は、住民税に関する手続きに利用されます。これは先述した通り、扶養控除申告書が個人住民税の扶養親族申告書も兼ねているためです。
16歳未満の扶養親族がいる場合は、氏名や個人番号などの情報を記載しましょう。また国内に住所を有さないときは「控除対象外国外扶養親族」の欄に〇をつけます。
以下で、給与についての用語を解説します。
主たる給与とは
「主たる給与」とは、扶養控除申告書を提出する給与支払者から受け取る給与です。
たとえば会社役員のように、2か所以上の企業から給与を受ける人には、主たる給与だけでは所得控除を控除しきれない場合があります。そのときは、後述する「従たる給与」で扶養控除申告書を提出できます。
従たる給与とは
「従たる給与」とは、主たる給与以外の給与支払者から受け取る給与のことです。先述した通り、従たる給与で扶養控除申告書を提出している場合は、該当欄に〇をつけます。
また、主たる給与の給与支払者に申告した控除対象扶養親族を、年の途中で従たる給与の給与支払者に変更することは可能です。
しかし、従たる給与の給与支払者に申告した控除対象扶養親族を、年の途中で主たる給与の給与支払者に変更することはできないので注意してください。
【転職したら扶養控除申告書の提出はどうなるの?】
年末調整を行う際には、転職する前に勤務していたA社の源泉徴収票を提出します。
令和3年度の変更点
税制改正により、令和3年の扶養控除申告書について一部変更がありました。主な変更内容をご紹介します。
- 行政手続きの押印廃止により、扶養控除申告書でも押印が不要となりました。
- 寡夫控除、特別の寡婦控除が廃止されたため欄が削除され、ひとり親控除が追加されています。
- 住民税に関する事項の「単身児童扶養者」欄が不要となったため、削除されました。
- 先述したように「左記の内容」欄が不要となり、「障害者又は勤労学生の内容」欄へと変更しています。
- 扶養控除申告書を電子データで回収する場合、事前に税務署で承認を受ける必要がありました。しかし、2021年4月以降からは事前承認が不要となりました。
【まとめ】
扶養控除申告書には提出期限もありますので、期限が過ぎないようにしっかりチェックしてそれぞれの項目を正しく記入し、きちんと提出することが大切です。
HR-GET編集部
「人事、労務、手続き、働き方改革、トラブル」などに関するものをテーマとし、人事・労務に関わるビジネスに日々奮闘する、多忙な経営者や人事・労務の担当者に役立つ情報を提供します。