社会保険料の計算方法や金額、種類まで基本情報から分かりやすく解説!

毎月の給与明細を見る度に、社会保険料って意外と引かれている…と気づいたことはありませんか?社会保険料は、仕組みや計算方法などが複雑なものですが、知らないと損をすることがあるかもしれません。
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そこで今回は、社会保険料の知っておきたい種類や計算方法、金額などについて詳しくご紹介します。社会保険料についてしっかり知りたいという方は、ぜひ参考にしてくださいね。
<目次>
社会保険料について
社会保険料とは、健康保険や厚生年金保険、雇用保険、介護保険、労災保険などにかかる保険料の事です。社会保険料は、会社に勤務している人であれば、毎月の給料から差し引かれています。まずは、それぞれを詳しく見ていきましょう。
社会保険料とは
会保険料は、健康保険や厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険の5種類あります。
それでは、社会保険料の種類について詳しくご紹介します。
社会保険料を計算するために必要な基礎知識
社会保険料を計算するためには、保険料率や標準報酬月額などの基礎知識が必要です。
社会保険料率について
社会保険料率は社会保険料を計算するために必要な知識です。保険料率は保険の種類によって異なります。そのため、保険ごとに確認しておく必要があります。また、保険料率は何度も変更されるため、最新の保険料率かどうかについても確認することが必要です。
保険料額表
保険料額表では健康保険料率や厚生年金保険料率、等級の確認が可能です。保険料額表は都道府県によって内容が異なるため、自分の住んでいる地域のものを確認する必要があります。協会けんぽのホームページで都道府県ごとの保険料額表が確認できます。自分の標準報酬月額がどの等級に当てはまっているのかを一目で確認することが可能です。厚生年金保険と健康保険の等級を同時に確認ができます。
保険料率の現状
以下の表で保険料率の現状をまとめました。
対象の保険 |
保険料率 |
備考 |
厚生年金 |
18.3% |
今後引き上げられる予定はなし |
健康保険 |
10.0% |
平成24年度から変更なし |
介護保険 |
1.80% |
令和3年度から改定された |
雇用保険 |
0.90% |
内訳は以下 ・会社負担:0.60% |
労災保険 |
0.30% |
3年に一度変更も、令和3年度は見送り |
参考:厚生労働省「雇用保険制度の概要」「令和3年度の雇用保険料率について」
標準報酬月額について
標準報酬月額とは保険料の計算に必要となるものです。等級を決める際も標準報酬月額が基準となります。標準報酬月額は基本給やその他の報酬の合計金額です。降給があった場合は変更できる制度があります。損をしないためにもすぐに変更しましょう。
標準報酬月額の決定するタイミング
標準報酬月額が決定するタイミングはいくつかあります。
- 資格取得時の決定
資格取得時とは、報酬月額の届出をしたときです。報酬月額の届出は従業員を雇用した際に行います。
- 定時決定
定時決定が実施されるのは、資格取得時の決定から1年後です。定時決定とは、4~6月の報酬月額をもとにして7月に行われます。17日以上の出勤がある月のみに利用されます。
- 随時決定
随時決定は降給や昇給などがあった場合に利用される制度です。そのため、タイミングは人によって異なります。利用しなければ過分に保険料を支払うことになります。給料が変わった際はすぐに利用しましょう。
- 産前産後休業終了時改定
産前産後休業終了時改定の場合は、復帰から3か月後に報酬月額が決定します。産休終了から3か月間の報酬をもとに決定します。
- 育児休業終了時改定
育児休業終了時改定の場合は、復帰から三か月後に報酬月額が決定します。育休終了から3か月間の報酬をもとに決定します。
等級について
等級とは標準報酬月額によって決まります。標準報酬月額が高いほど等級も上がっていきます。厚生年金保険の等級は32級が最大です。健康保険の等級は50級まであります。等級が上がっていくほど支払う保険料も上がっていきます。事業者や労務担当は労働者ごとの等級をしっかりと把握しておきましょう。等級は保険料額表で簡単に確認できます。
端数の対応について
標準報酬月額は人によって異なるため、保険料に端数が出る場合もあります。端数が出た場合の対処法は保険料の支払い方によって異なります。会社と個人で折半する保険料は端数によっては一致しません。保険料を給与から天引きの場合、50銭以下は切り捨て、50銭を超えていると1円に切り上げられます。会社に現金で支払っている場合、50銭未満を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げます。
社会保険の種類について
健康保険
健康保険は、協会けんぽや組合保険などがあり、その会社によって保険者が異なりますし、保険料も異なります。公務員の場合は、共済組合となります。健康保険を運営しているものが保険者で、加入する人のことを被保険者と呼びます。
法律では、保険料率の上限や下限が決められているので、それぞれの保険者がその範囲の中で保険料率を決め、運営しています。
また、40歳から64歳の被保険者は、介護保険料を支払います。
厚生年金保険
厚生年金保険は、保険の加入者が高齢により働けなくなる、病気やけがが原因で障害が残った際などに保険金の給付を行うことで、被保険者の生活を救済する保険制度です。
不幸にも加入者が亡くなってしまった場合は、困窮した遺族に給付されます。
厚生年金保険は公的年金制度のため、一定の基準を満たせば必ず加入することになります。
似ている制度として、厚生年金基金がありますが、こちらは私的年金制度のため、全ての企業が実施しているわけではなく、ニーズに合わせて加入する仕組みです。
また、厚生年金基金制度は、国の代わりに保険料の一部を集め、企業が独自に管理・運用し、給付を上積みすることができます。
介護保険
介護保険は、自宅でヘルパーなど介護のサービスを受ける際の費用を、一部肩代わりするための保険料です。会社に勤めている場合は、40歳から64歳の従業員が対象となります。
雇用保険
雇用保険は、失業者や60歳以上で会社勤めをしている一部の労働者、育児や介護休暇をとった労働者に給付するための保険料です。
ただし、以下に該当する場合は原則として雇用保険の対象外となります。
- 個人事業主
- 家族従業員
- 法人役員
- 学生
また、労働時間週20時間以上・31日以上の雇用を満たす方は、雇用保険の対象になります。
労災保険
労災保険は、従業員が仕事中や通勤時に事故・災害にあった場合、会社が従業員に補償すべきお金を肩代わりしてもらうために支払う保険料のことです。
労基法上の労働者にあたる方は、雇用期間や労働時間に関わらず、すべて保障の対象者になります。
また、原則補償対象外となる経営者も、特別加入のケースで対象になります。
厚生年金保険の計算方法
次に、社会保険料の計算方法をご紹介します。
健康保険料の従業員負担額は、「健康保険料(従業員負担額)=標準報酬月額×健康保険料率÷2」で求めることができます。
また、厚生年金保険料の従業員負担額は「厚生年金保険料(本人負担額)=標準報酬月額×18.300%÷2」で求めることができます。
そして、介護保険料は「介護保険料(本人負担額)=標準報酬月額×介護保険料率÷2」で求めることができます。
しかし、健康保険や介護保険の料率は定期的に改定があるので注意しましょう。厚生年金保険料率は、平成29年9月以降の保険料率は18.300%で固定されており、令和2年に関しても18.300%で固定されています。
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厚生年金保険の金額について
社会保険料は、社会保険料額票から自分の標準報酬月額を割り出し、それに保険料率を乗じて計算していきます。
健康保険料や介護保険料、厚生年金保険料は、収入の見込み額に基づいて標準報酬月額を出します。雇用保険料や労災保険料は、毎月の自分の収入により保険料を割り出します。
協会けんぽの場合の健康保険料や介護保険料は、各都道府県で定められた健康保険の料額票に基づいて保険料が決定します。健保組合の場合、組合ごとに健康保険と介護保険の料額表に定められています。
厚生年金保険料は、全国一律に定められた厚生年金保険の料額表に基づいて決められます。また、厚生年金基金に加入しているときは、基金ごとに厚生年金基金の掛け金や厚生年金保険料率が違うので注意しましょう。
労災保険料は、事業の種類により料率が決められています。雇用保険料は、事業の種類により被保険者の負担と、企業負担の率が決められています。
その他の社会保険における計算方法
健康保険と介護保険、厚生年金保険は会社と労働者が折半するため、計算後に1/2したものが支払う金額です。
健康保険の計算方法
以下の式で計算します。
健康保険料=標準報酬月額×健康保険料率
現在の健康保険料率は9.87%です。
そのため、給与が30万円だった場合の計算式は以下の通りです。
300,000×0.0987=29,610円
29,610÷2=13,805円
つまり、会社と労働者が13,805円ずつ負担します。
介護保険の計算方法
以下の式で計算します。
介護保険料=標準報酬月額×介護保険料率
現在の介護保険料率は1.80%です。
そのため、標準報酬月額が30万円だった場合の計算式は以下の通りです。
300,000×0.018=5,400円
5,400÷2=2,700円
つまり、会社と労働者が2,700円ずつ支払うことになります。
雇用保険の計算方法
雇用保険料は会社と労働者の負担する金額が異なります。
賃金×0.9%=雇用保険料
賃金×0.6%=会社負担分の雇用保険料
賃金×0.3%=個人負担分の雇用保険料
賃金が30万円だった場合の計算式は以下の通りです。
・会社負担分
300,000×0.006=1,800円
・個人負担分
300,000×0.003=900円
会社が1,800円、個人が900円支払うことになります。
労災保険の計算方法
以下の式で計算します。
労災保険料=賃金×0.003
労災保険料は会社が全額負担です。そのため、1/2や計算を分けて行う必要はありません。
賃金が30万円だった場合の計算式は以下の通りです。
300,000×0.003=900円
900円を会社が支払うことになります。
社会保険の控除について
配偶者や親族の保険料を代わりに支払った場合、支払った保険料分を所得から控除することができます。
社会保険料控除の概要
配偶者や親族などの明らかに独立していない者の社会保険料を代わりに支払ったとき利用できる制度です。代わりに支払った分を控除した所得が税金の対象になるため、支払う税金を減らすことができます。控除を受けるためには申請書が必要で、申請に通った方のみ控除対象です。
社会保険料控除の計算方法
以下の式で計算されます。
(所得額)-(支払った(代わりに負担した)保険料)=(課税対象の所得)
所得30万円で1人分の保険料を負担した場合の計算式は以下の通りです。
300,000-44,405=255,595
つまり、25,5595円が課税対象になり、かなりの金額を控除できます。
社会保険の納付について
社会保険料の納付には期限があります。期限までに納付することができない事情がある場合は猶予を設ける制度があります。
納付期限と方法
保険料の納付期限は翌月の末日です。3月分の納付期限は4月末です。期限までの支払いが確認できない場合は督促状が届きます。それでも、支払いが確認できない場合は財産調査の実施や延滞金が発生します。財産調査とは社会保険料を支払うことができるだけの財産がないのかを調査することです。
納付の方法は口座振替と金融機関の窓口、電子納付の3つです。口座振替だと自動で引き落としをしてくれるシステムがあるため、払い忘れを防ぐことができます。納付方法を変更したい場合は、健康保険厚生年金保険 保険料口座振替納付(変更)申出書を年金事務所に提出しなければいけません。
納付猶予と免除について
保険料を納めている者の所得が減ってしまった際に納付の一部を免除、納付期限に猶予を設ける制度があります。納付期限の猶予と免除どちらも申請が必要です。学生の場合は学生納付特例を利用するといったように、その人の状況によって受ける制度が異なります。育休や産休、失業の場合に免除や猶予が設けられることがあります。厚生年金保険料を未納のままにすると納めていない分を受け取ることができません。免除制度を利用すれば納めていた場合にもらえる量の1/2を受け取ることができます。
まとめ:社会保険料の正しい知識を身に着け最大限の活用を
毎月の給与から引かれている社会保険料は、公助を要するさまざまな制度を支えています。
そんな社会保険料は、年齢や収入によって大きく異なります。
また、法改正などいろいろな要因によって加入対象や料率も変わるので注意が必要です。
社会保険料を毎月正しく計算するためには、被保険者の情報や法改正などの情報もしっかり集めておくことが大切です。
社会保険料は長生きした分だけ得をする保険です。
正しい知識を身に着け最大限活用することも大切ですが、健康にも注意していきましょう。
HR-GET編集部
HR-Get(エイチアールゲット)は、創業から30年以上にわたり、社会保険労務士の方や、企業の労務ご担当者様向けにシステムを開発・提供・サポートをしている株式会社日本シャルフが運営するWEBメディアです。
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記事公開日:2020年9月30日