【入社手続きに必要な書類と対応を解説!労働者ごとの手続きも】

【入社手続きに必要な書類と対応を解説!労働者ごとの手続きも】
 入社手続きは、労働者が安心して業務をできるようにするための重要な業務です。
企業の人事・労務の担当者は、従業員が入社するために必要な書類の作成や、備品の準備、保険関係の手続きなどを期日までに済ませておく必要があります。
この記事では、入社に関する書類作成や手続きのフロー、ケース別の対応方法についてご紹介します。
(2023年6月14日 更新)

〈目次〉

内定者に送付する書類

内定者が決まり次第、入社日までに必要な書類を作成して内定者へ送付する必要があります。

採用通知書(内定通知書)

企業に採用する意思がある場合、内定者宛に採用通知書を送付します。これは、企業の採用意思を伝えるとともに、内定者の入社意思を確認することが目的です。後述する入社承諾書と誓約書を作成して、採用通知書と合わせて送付することが一般的です。


採用通知書には、主に以下の内容を記載します。

採用通知書に記載する事項
  • 求人応募に対してのお礼
  • 内定の通知
  • 入社日(未定ならば後日連絡する旨を記載)
  • 勤務地・配属先
  • 今回送付した書類の案内
  • 提出が必要な書類と提出期限の一覧
  • 問い合わせ先

入社承諾書・誓約書

入社承諾書と誓約書は、企業が正式に内定を出したことを示す書類です。また、内定者の入社意思を確認するための証明書でもあります。

内定者が入社に同意する場合、氏名の記入と捺印をして提出してもらいます。

入社承諾書・誓約書に記載する内容は、主に以下が挙げられます。

入社承諾書・誓約書に記載する事項
  • 就業規則に関する説明
  • 秘密保持に関する説明
  • 入社日(未定ならば後日連絡する旨を記載)
  • 入社後の待遇に関する説明

この時点で辞退の連絡を受けた場合は、あらためて求人募集の準備を進めます。

入社前に送付する書類

内定者の入社意思を確認できたら、契約のために必要な書類を準備します。
労働契約を交わす際に送付する書類として、以下があります。

雇用契約書

雇用契約書とは民法第623条に基づき、企業と労働者の間で雇用契約が締結したことを証明する書面です。法律上、書面での交付義務はありませんが、雇用後のトラブルを防ぐためにも書面での作成が望まれます。後述する労働条件通知書とまとめることも可能です。

労働条件通知書

労働基準法の第十五条には以下の記載があります。


”使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。”

引用:e-Gov法令検索「労働基準法


このように、企業は労働者に対して労働条件を明らかにする義務があり、労働条件通知書は入社前の段階で送付する必要があります。万が一、労働条件の内容に不備があった場合は、30万円以下の罰金が科せられる可能性があるため注意が必要です。

絶対的明示事項の内容

労働条件通知書に記載する内容には、書面で交付する義務がある「絶対的明示事項」と、口頭でも明示可能な「相対的明示事項」があります。


絶対的明示事項とは、以下の内容を指します。

書面の交付が必要な明示事項 具体的な内容
労働契約期間に関する説明 契約期間があれば明示
就業場所と業務内容に関する説明 入社後の就業場所・従事する業務
労働時間に関する説明 超過勤務の有無・休憩時間・休日・休暇・交代制勤務の転換
賃金に関する説明 賃金の決定・計算方法・支払い方法・支払時期・賃金の締め切り・昇給(※1)
退職に関する説明 退職の事由・手続・解雇の事由も含む
出典:e-Gov法令検索「労働基準法施行規則
(※1)昇給のみ明示がなくても可

労働者が希望した場合に限り、ファックス・メール・SNS(※2)でも交付できます。その際、送信した内容が確実に届いているかを確認することが望ましいでしょう。


(※2)労働者がプリントアウトして書面を作成できるものに限る

相対的明示事項の内容

企業で相対的明示事項に関する定めがある場合は、労働者に対して明示する義務があります。


相対的明示事項の内容は以下の通りです。

口頭でも説明可能な明示事項 具体的な内容
退職手当に関する説明 該当する労働者の範囲・手当の決定・計算方法・支払い方法・支払い時期
臨時の賃金と賞与に関する説明 臨時の賃金、賞与における賃金と最低賃金額
労働者が負担する費用に関する説明 食費・作業用品・その他
安全と衛生に関する説明 -
職業訓練に関する説明 -
災害補償に関する説明 災害補償・業務外に発生した傷病扶助
表彰と制裁に関する説明 -
休職に関する説明 -
出典:e-Gov法令検索「労働基準法施行規則

口頭のみでも説明は可能ですが、労働条件に関するトラブルを防ぐためにも書面に残しておくことをおすすめします。

そのほか必要な事項

前述した内容の他にも、以下のような規定がある場合は明示しておく必要があります。

  • 減給および処分など罰則に関する規定
  • 人事異動や転勤、業務内容の変更の可能性

労働条件通知書を作成する際は、厚生労働省のホームページに掲載されている「労働条件通知書」の雛形を参考にしてください。

入社に必要な書類

入社日までに従業員に用意してもらう書類を紹介します。すべて入社手続きに必要な書類となるため、抜け漏れがないよう注意しましょう。

提出が必要な書類

多くの企業で提出を求める書類や証明書には、以下が挙げられます。
提出書類
備考                 
年金手帳
全員提出
源泉徴収票
前職がある場合
雇用保険被保険者証
前職がある場合
扶養控除等申告書
全員提出
健康保険扶養者異動届
該当する家族がいる場合
給与振込先申請書
全員提出
マイナンバー(カード未取得の場合は本人確認書類と、通知カードもしくは住民票が必要)
全員提出

状況に応じて提出が必要な書類

企業によって、以下の書類が必要な場合もあります。
提出書類
備考
卒業証明書
新卒・第二新卒
住民票
住民票記載事項証明書でも代用可能
退職証明書
前職がある場合
自社でどの書類が必要になるのか、あらかじめ確認しておきましょう。

入社後の手続き

入社後は労働者に提出してもらった情報をもとに必要な書類を作成して、保険や税金に関する手続きを進めます。ここからは、入社後の手続きについて解説します。

社会保険の手続き

労働者が厚生年金保険の加入条件を満たしている場合、以下の手続きを行います。

  1. 労働者から年金手帳またはマイナンバーカードを提出してもらう
  2. 提供された労働者の情報をもとに「被保険者資格取得届」を年金事務所に提出する
  3. おおむね1週間前後で「健康保険被保険者証」が届く
  4. 健康保険被保険者証を本人に渡す

加入する必要があると判明してから5日以内に書類を提出しましょう。
また、労働者に配偶者や子どもが被扶養者に該当する場合は「健康保険被扶養者(異動)届」「国民年金第3号被保険者該当届」も合わせて提出します。

雇用保険の手続き

以下の条件に当てはまる労働者は、雇用保険の加入対象者です。

  • 31日以上継続して雇用される見込みがあること
  • 所定労働時間が週に20時間以上
ただし、法人の取締役や、週の労働時間が30時間未満の季節労働者、日雇い労働者は対象外となります。
雇用保険の加入手続きは、以下の通りです。

  1. 労働者を雇用した月の翌月10日までに「雇用保険被保険者資格取得届」をハローワークに提出する
  2. ハローワークから「雇用保険被保険者証」が届く
  3. 雇用保険被保険者証を本人に渡す

税金の手続き

企業には、所得税と住民税を毎月の給料から天引きして、定められた期日に国および自治体に納める義務があります。

所得税の手続きでは、労働者から「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を最初の給与支払日の前日までに提出してもらう必要があります。税務署や役所への提出は不要で、申告書は社内で保管します。

また、住民税を給料から天引きする「特別徴収」は、前年の給与がない新卒入社の場合、翌年6月から発生します。

入社時の手続きは不要ですが、中途採用の場合は「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を提出してもらい、入社した月の翌月10日までに納付先の市町村に提出する必要があります。

労災保険の手続き

労災保険は、雇用形態を問わず、ひとりでも労働者がいる事業者であれば適用されます。労災保険の加入には、労働者ごとに個別の手続きは必要ありません。

法定三帳簿(労働者名簿・賃金台帳・出勤簿)の作成

労働基準法では、企業には労働者の法定帳簿を作成して、保存する義務があると定められています。法定帳簿とは、労働者名簿・賃金台帳・出勤簿を指し、これらは一般的に「法定三帳簿」と呼ばれています。

各帳簿の記入項目は以下の通りです。
帳簿名称
記載項目
保存期間
労働者名簿
氏名、履歴、退職・解雇・死亡日とその理由 など
労働者の退職・解雇・死亡日から3年
賃金台帳
氏名、賃金の計算期間、労働日数、労働時間数 など
記入最終日から3年
出勤簿
出勤簿、使用者が始業時刻と終業時刻を記載した書類 など
最終出勤日から3年

備品や貸出物の手配

業務に必要な備品や貸出物は、入社前に揃えておく必要があります。また、インターネット環境の構築やメールアドレスの新規作成、社内システムの登録なども事前に済ませておくと、入社後の業務をスムーズに始められます。
一般的に必要とされる備品や貸出物には、以下があります。

  • 制服や作業服
  • 社員証、セキュリティカード、名刺
  • 机とイス、パソコン、事務用品、ロッカー など

人事管理システムへの情報登録

人事管理システムを用いて勤怠時間や日々の業務内容を管理している場合は、入社日当日から利用できるように準備が必要です。入社時の面談や研修の段階から勤怠管理が必要になるため、入力できる情報は早めに登録しておきましょう。

【労働者の種類別】通常の入社手続きとの共通点・相違点

雇用形態や、雇用する労働者の区分によって入社手続きが一部異なります。この章では、正社員と異なるケースにおける入社手続きについて紹介します。

派遣社員の入社手続き

派遣社員を雇用する場合の入社手続きは、主に派遣会社との間で交わされます。
派遣社員を受け入れる企業の手続きの流れは、以下の通りです。

  1. 派遣会社に派遣を依頼する
  2. 派遣期間の制限を受ける(※)場合は「抵触日通知書」を送付する
  3. 派遣会社と「労働者派遣契約」を結ぶ
  4. 派遣される社員の情報を記載した「派遣先通知書」が派遣会社から届く
  5. 契約期間の初日から就業開始
※労働者が無期雇用労働者や60歳以上、代替要員など

派遣社員が入社するまでに「派遣先管理台帳」の準備と、業務に必要な備品を用意しておきましょう。

パート・アルバイトの入社手続き

パート・アルバイトを雇用する際の入社手続きは、基本的に正社員と同じです。
ただし、前述した「労働条件通知書」の「絶対的明示事項」内容に加えて、以下の4つの事項を書面にて明示する義務があります。

  • 昇給の有無
  • 退職手当の有無
  • 賞与の有無
  • 相談窓口

明示する義務は初回の契約時だけではなく、契約更新時にも発生するため注意が必要です。
違反した場合は、行政指導でも改善が見られなければ、労働者ひとりにつき10万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

パート・アルバイトの社会保険

パート・アルバイトが社会保険に加入するための条件は、以下(※)の通りです。

  • 501人以上の従業員が在籍する企業
  • 1週間の労働時間が20時間以上
  • ひと月の賃金が8.8万円以上
  • 勤務期間が2か月以上(見込み)
  • 学生は対象外(夜間・通信・定時制は対象)

なお、法改正によって、2022年10月以降は従業員数が101人以上、2024年10月以降は51人以上の企業が対象となり、パート・アルバイトの社会保険の適用範囲が拡大されています。

(※)出典:厚生労働省「社会保険適用拡大ガイドブック」

外国人の入社手続き

外国人労働者であっても、他の労働者と同様に労働基準法や社会保険に関する法令が適用されます。労働条件の明示は、該当する外国人が理解できる方法で伝えることが望ましいでしょう。
また、国内在住の外国人を雇用する場合は、雇用状況の届出をハローワークに提出する責務があります。
対象となる外国人の範囲は以下の通りです。

  • 日本国籍を持たない(特別永住者は対象外)
  • 在留資格が外交・公用以外

雇用保険に加入するか否かで、提出する書類と内容が異なります。
雇用保険に加入する場合
雇用保険に加入しない場合
届出書類 雇用保険被保険者資格取得届 外国人雇用状況届出書
届出事項
・氏名
・在留資格
・在留期間 など
・氏名
・在留資格
・在留期間
・雇用年月日 など
届出先 雇用保険を適用している事業所のハローワーク 勤務地のハローワーク
届出期限 労働者を雇用した月の翌月10日まで 労働者を雇用した月の翌月末日まで

出典:厚生労働省「外国人雇用はルールを守って適正に」

届出事項を記載する際は、外国人労働者から以下の書類を提出してもらい、内容を確認する必要があります。

  • 在留カード
  • パスポート
  • 資格外活動許可書(資格外活動許可を受ける場合)

高齢者の入社手続き

高齢者を雇用する場合、加入する保険内容の一部が異なります。

雇用する労働者が65歳未満の場合、雇用保険は一般の人と変わりません。65歳以上の場合は「高年齢被保険者」が適用されます。手続きは他の労働者と同様です。

また、厚生年金保険の対象年齢は70歳未満です。ただし、老齢年金を受給できる加入期間に満たない場合は、70歳以上でも「高齢任意加入被保険者」として任意で厚生年金に加入できます。

健康保険の対象年齢は75歳未満です。70歳以上で協会けんぽに加入する場合、「健康保険高齢受給者証」が交付されます。

なお、高齢者を雇用した後は、毎年6月1日の「高年齢者雇用状況」をハローワークに報告する義務があります。

全国健康保険協会「高齢受給者証 | こんな時に健保

障害者の入社手続き

民間企業の場合、知的障害・身体障害・精神障害の認定を受けた人の割合「法定雇用率」を2.3%以上にする義務があります。これはつまり、従業員100人につき3人以上の割合です。

障害者を5人以上雇用する場合は「障害者職業生活相談員」を配置する必要があります。また、障害者を雇用すると、以下の助成金の対象となる可能性があります。入社手続きと合わせて申請準備を進めておきましょう。

  • 特定求職者雇用開発助成金
  • トライアル雇用助成金
  • 障害者雇用納付金制度に基づく助成金

また、高齢者と同様に「障害者雇用状況」を毎年ハローワークに報告する義務があります。

参考:厚生労働省「事業主の方へ

まとめ

入社手続きには、重要な書類の取り交わしが何度も発生します。なかには法律で義務付けられているものもあり、不備が発覚した場合は罰金を科せられる可能性もあります。
手続きの抜け漏れが発生しないように、あらかじめ社内で入社手続きのフローを確立するとともに、入社した従業員が安心して働ける環境を速やかに整備することが求められます。

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