従業員が休業に!休業補償で適用される保険とその必要性

従業員が休業に!休業補償で適用される保険とその必要性

新型コロナウイルス感染症の拡大によって、すっかり聞き慣れることになった「休業」という言葉。ほとんどの人がしっかりと意味を理解できていないかもしれません。休業自体の概念や、休業に対する公的補償の詳細、公的補償の範囲外をカバーしてくれる保険について解説します。

<目次>

休業について

休業とは「労働者が会社との契約を結んだまま、業務を行わないこと」を指します。つまり、労働者に働く意思はあるのに働くことができない状況です。働くことができない状況とは、労働者の都合で働けない場合と、会社の都合で働かせることができない場合とに大別されます。

労働者都合による休業には、通勤時や勤務中に起こったケガや病気、出産などのケースが適用されます。会社側都合の休業には、自然災害といった不可抗力なケースもあれば、会社の過失による業績不振なども挙げられます。

また、似たような言葉で「休業」「休暇」「休日」があります。

休業と休暇はどちらも「労働日だったはずの労働を免除する」意味を持ち、労働基準法が定める明確な違いはありません。
休日は、労働基準法によって「労働者が労働する義務のない日」と定められています。
この休日は原則として、1週に1日以上与えることとし、正式には「法定休日」と呼びます。(労働基準法第32、35条)

休業の分類①:労働災害

労働災害による休業とは、労働者が通勤中・仕事中にケガや病気になり働くことができなくなった場合に休業を行うことです。
働けない期間を補償するために労災保険から「休業補償給付」が給付されます。

また、ケガや病気にかかった治療費も労働災害の対象として補償されます。これは「療養補償給付」と呼びます。
労働災害に伴う休業補償や療養補償は会社が労働者に対して行わなければならない義務で、労働基準法に規定されています。なお、労働災害は場合によっては労働者から損害賠償の請求をされることがあります。休業補償は労災保険から支払われます。ただし、実際は3日間の待機期間があるため、休業4日目以降に補償される仕組みです。待機期間である3日分は、事業主が労働者に直接補償を支払う必要があります。労働基準法第76条の規定に基づいて義務付けられています。

休業の分類②:自己都合

労働者の都合による休業には4つのケースがあります。それぞれ生活を補償する手当が給付される可能性があります。自己都合による休業は以下の4つです。

  • 疾病の療養による休業
  • 産前産後による休業
  • 育児による休業
  • 介護による休業

産前産後休業、育児休業、介護休業には、休業期間における会社の賃金補償は義務付けられていません。そのため、労働者は健康保険や雇用保険の給与補償を利用します。産前産後休業には「出産手当金」や「出産育児一時金」が、育児休業には「育児休業給付金」が、介護休業には「介護休業給付金」があります。

疾病の療養による休業

労働者がケガや病気になり働くことができなくなった場合、療養に必要な期間に取得できる休業のことです。働けない期間を補償するために「休業補償給付」が給付されます。また、ケガや病気にかかった治療費も労災保険の「療養補償給付」を受けることができます。労働災害に伴う療養補償・休業補償は、会社が労働者に行うものとして労働基準法により義務付けられています。

産前産後休業

産前産後休業とは、妊娠中の女性が出産予定日の6週間以内、及び産後8週間に取得する休業です。労働基準法第65条で定められています。また、双子や三つ子など多胎妊娠の場合は、休業期間が長くなり14週間以内の申請が可能です。

補償には「出産育児一時金」と「出産手当金」があります。
出産育児一時金は、健康保険の加入者が対象です。通常子供1人につき42万円が支給されます。
出産手当金は、健康保険の加入者が対象です。産前産後休業の期間中は1日あたりもらえる賃金のうち、3分の2に相当する金額が支給されます。ただし、休業中も会社が給与を支払っており、出産手当金よりも金額が多い場合は出産手当金は支給されません。なお、どちらの給付金も非課税です。

育児休業

育児休業とは、1歳未満の子供を養育する労働者が取得できる休業のことです。男女問わずに取得できます。
補償には「育児休業給付金」があります。雇用保険加入者が対象で、男女で給付期間が異なります。

男性は子供の出生当日から1歳を迎える前日までの期間が、女性は産後休業期間終了翌日から1歳を迎える前日までが対象期間です。支給額は、育児休業開始から6ヶ月までが休業開始前賃金の67%相当額、それ以降が50%相当額です。

なお、育児休業給付金は非課税のため、所得税に含まれません。さらに労働者は受給中の社会保険料も免除されます。

介護休業

配偶者・父母・子・配偶者の父母が介護を必要な状態にある、労働者が取得できる休業のことです。育児介護休業法(第12条)により、労働者が事業主に介護休業申出をした場合、事業主は拒むことができません。

補償には「介護休業給付金」があります。雇用保険に加入していて、介護のために2週間以上休業する場合に受けられる制度で、労働者は給与の67%を受給できます。また、対象家族一人につき最長93日を限度として3回まで受給できます。

休業の分類③:会社都合

会社都合とは、使用者の責に帰すべき事由による休業のことです。
具体的には、機材のトラブルで作業が出来なかった場合や、在宅勤務で対応が可能と見受けられたのに行わなかった場合などがあります。ただし、地震や災害などの不可抗力による場合は除きます。

会社都合の休業において、事業主は労働者に「休業手当」を支払わなければなりません。労働基準法26条で定められており、平均賃金の60%以上の賃金を支払う義務があります。

休業の分類④:天災事変

天災事変による休業とは、地震、台風、風水害など不可抗力によって事業の継続ができなくなった場合の休業です。不可抗力とは「その原因が事業の外部より発生した事故であること」「事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること」の両方を満たすものとされています。

この場合、事業主は労働基準法第26条の休業手当を支払う義務はありませんが、労働者の不利益を回避するように努力することが大切です。

休業補償と休業手当の違い

休業内容によって「休業補償」「休業手当」のどちらが適用されるか変わります。
どちらも休業中の給与を補償するものという意味では同じですが、実は全くの別物です。

従業員が思わぬ状況へ発展した場合に備えてどんな違いがあり、どんな場合に支払うのかを理解しておきましょう。

休業補償とは

休業補償とは、労働者が業務上の負傷や疾病によって休業した場合に支払われる補償です。

補償金額は賃金の60%と決まっており、課税の対象ではありません。
また、労働基準法第76条で「労働災害による休業の補償は事業主が行う」と義務付けられています。しかし、会社の規模や経営状況によっては、義務付けしていても従業員の救済が厳しい場合があります。そのため事業主は、労災保険に加入しなければなりません。労災保険は日本の公的保険制度であり、従業員を一人でも雇用した段階で加入は義務付けられます。事業主は労災保険を使って従業者に休業補償を支払います。

休業手当とは

休業手当とは、会社の都合で労働者を休業させてしまった場合に支払われる賃金です。一般的に、経営不振や設備の不備などにより休業する場合が「会社都合の休業」に該当します。

支払い金額は労働基準法第26条で定められており、平均賃金の60%以上とされています。ただし、労働義務のない日(就業規則で休日となっている日)の休業手当は支払われません。なお、賃金という扱いなので所得税がかかります。

また、休業手当は義務付けられているため、支払わない事業主は労働基準法に違反したとして罰金30万円が課せられます。

万が一の休業に対して保険が有効

業務上のケガや病気などの休業リスクは、従業員だけでなく経営者本人にもあり得ることです。そのため、万が一のことを考えて、公的補償(休業補償)以外の補償も準備しておくべきです。また、休業補償だけだと給与の60%しか補償されません。結果、従業員の生活水準を落とすことになります。そうならないためにも保険の加入がおすすめです。加入すれば、セーフティネットのない自営業者の方も安心できます。

どんな保険が適用されるのか?

所得補償保険や就業不能保険が適用されます。
働き方によって契約内容が異なるため、法人と従業員、双方にも対応します。

法人向け、従業員向けそれぞれの一般的な補償内容は以下の通りです。

法人向け

天災や事故で休業せざるを得なくなった場合に、事故から復旧までに生じた粗利益の損失、家賃の損失を補償します。

従業員向け

GLTD(団体長期障害所得補償保険)で従業員の福利厚生を充実させることができます。GLTDとは、ケガや病気で休業せざるを得なくなった従業員が被る所得の損失を、定年年齢等まで長期にわたりカバーできる保険です。企業の従業員数ごとに加入することで、人事労務担当者向けや従業員向けといった多数のサービスも受けることができます。

誰にでも休業する可能性がある

病気やケガをして休業する可能性は、従業員・経営者にかかわらず、誰にでもあります。
また、身体的な疾病だけでなく、うつ病などの精神的な病気にかかる可能性もあります。

とくに、精神病は療養期間が人によってさまざまです。療養期間が長くなればなるほど、休業日数が増える一方で、収入は減ります。最悪のケースに備えて、長期療養に対応している保険への加入がおすすめです。

まとめ

業務上負ってしまったケガや病気による休業中に支給される「休業補償」。会社都合で従業員が休業する場合に支払う「休業手当」。また、「所得補償保険」や「就業不能保険」などの保険。それらに関する知識がなければ、いざという時に適切な対応が出来ないかもしれません。

大切な従業員を守るため、また会社の経営を守るためにも、制度の把握とGLTDのような保険の加入を検討しましょう。

HR-GET編集部

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