HR-Get

2021年09月

2021.09.29

【社労士に聞く】確定拠出年金制度を導入すると随時改定の対象になるの?

社会保険・労働保険手続きQ&A  

<質問>

選択制確定拠出年金制度の導入を考えています。正社員全員、基本給から準備金として15,000円を切り出し、その範囲内で社員各々が任意の金額を拠出するものとなっています。

例えば、制度導入時に基本給から切り分けた15,000円を拠出した場合、随時改定の対象になるのでしょうか。また、導入後に拠出額を変更した場合も再び随時改定の対象になるのでしょうか。

<回答>

確定拠出年金の導入を契機に二等級以上の変動があった場合は、随時改定の対象となります。
また、確定拠出年金制度を導入した後に拠出額を変更した場合(これまで拠出額が0円だった方が拠出するようになった場合も含む)については、随時改定の対象とはなりません。

〇選択制確定拠出年金制度とは

企業型確定拠出年金の一つで、従業員の給与を減額した上で、当該減額部分を事業主掛金として拠出するか、もしくは前払い退職金として給与等への上乗せで受け取るかを従業員が選択できる仕組みです。

老後の資産形成を従業員自らの意思に基づき、積み立てていくことが可能な制度であり、会社にとっては、新たな費用を負担することなく企業年金制度を導入できる点が魅力となっています。

〇社会保険上の報酬となるのは、給与額から各従業員が拠出をした金額を引いた分となります。

給与から切り出した事業主掛金の原資(ご質問の中の「準備金」)から拠出金を引いた差額である給与額の変動は、従業員の選択のみにより変動するものであるため、当該給与額の変動は原則随時改定には該当しないこととなっております。(平成23年4月15日 疑義照会(回答)No.2011-200)

ただし、制度の導入と同時に確定拠出年金の拠出金の拠出を開始する場合は、基本給に前払い退職金を加えた給与額は、制度導入(賃金規程改定)前の基本給より減額となるため、賃金規程の改定により降給が行われたことになります。賃金規程の改定後、拠出を開始したことにより、標準報酬月額の2等級以上の変動があるならば、改定後の賃金規程による賃金の支給開始月を起算月とする随時改定に該当すると考えられます。
そのため、制度導入を契機に2等級以上標準報酬月額が下がる場合は随時改定の対象となります。

人事の視点:退職金制度で企業型確定拠出年金が導入されている場合、事前に説明しておきましょう

退職金制度で企業型確定拠出年金が導入されている場合、制度について事前に説明しておきましょう。

退職金制度は4つの制度に分かれています。

①退職一時金制度 ②確定給付企業年金制度 ③中小企業退職金共済 ④企業型確定拠出年金制度
その中で「企業型確定拠出年金制度」は企業が毎月積み立てはしますが、運用するのは従業員自身です。

以下の各項目について従業員に案内しておくといいでしょう。

 ①運用商品の選択は従業員自身に行っていただき運用するので、元本割れのリスクがあること
 ②社外積立なので、万一会社が倒産しても掛金は保障される
 ③自身で負担すれば掛金を上乗せすることが出来る(マッチング拠出)

 ④60歳まで解約することが出来ない。

退職の際は、転職先に同様の制度があれば移換できますが、ない場合は個人型確定拠出年金への移換手続きが必要です。退職後半年以内に移換しない場合は国民年金基金連合会へ自動移換されます。

自動移換されてしまうと、①資産の運用がされない、②管理手数料が発生する、③老齢給付金の受給要件となる通算加入者等期間に算入されない、ということが生じますので加入時に知らせておきましょう。

筆者紹介

 社会保険労務士法人 HALZ(https://halz.co.jp/
「外部人事部」をコンセプトに幅広い人事領域をサポートする社労士法人です。企業人事の実務経験、社労士として数々の企業様への労務コンサル経験をもとに、実務家目線に立ち企業様をサポート。給与計算や手続きを通じ把握した労務課題への改善提案、さらに採用支援や人事制度の導入提案も手掛け、企業人事の皆様を幅広く支援します。

2021.09.22

労働条件通知書はパートにも必要?正社員との格差を改善する政策

【目次】

  1. 労働条件通知書とは
  2. パートタイマーとは?
  3. パートタイム労働法について
  4. 労働条件通知書はパートにも必要?
  5. まとめ

正社員とパートタイムやアルバイトとの間で、不当な格差が長らく社会問題になっています。
格差を理由に退職してしまった人がいるという経験をお持ちの方もいるのではないでしょうか?
2020年4月1日からパートタイム・有期雇用労働法が施行されました。それによって、正社員とパートの間に不合理な待遇差が生まれることが禁止になりました。法の改正によって、労働条件通知書の内容を見直す必要があります。人事や労務にかかわる人間として記載しなければならない事項などを把握しておきましょう。

1.労働条件通知書とは

労働条件通知書とは、事業主が労働者と雇用契約を結ぶ際、労働条件を書面に明示したものです。契約期間や賃金など必ず明示しなければいけない項目は決まっています。労働者が事業主によって騙されることや軽んじられることを防ぐために、必ず作成しなければなりません。労働基準法でも作成を義務付けられており、労働者に明示を怠った場合は違法にあたります。また、労働条件通知書を作成することで、書面上の労働条件が実際の労働条件と異なるといった事業主と労働者のトラブルを防ぐメリットがあります。

労働条件通知書に必ず記載する事項

労働条件通知書には、特に決まった書式はありません。ただし、必ず記載しなければいけない事項(絶対的明示記載事項)があります。抜けや不備があってはいけません。厚生労働省や労働局のホームページにひな形を確認して作成を進めましょう。労働条件通知書に必ず記載すべき項目は、以下のとおりです。
・労働契約の期間
・就業場所
・従事すべき業務内容
・始業及び終業時間
・休日、休暇
・賃金の計算及び支払い方法
・退職に関する事項
・労働者が仕事に従事するうえで基礎となる事項

口頭での説明でよい事項もある

絶対的明示記載事項の他にも、事業主が任意に記載する相対的明示記載事項があります。相対的明示記載項目は任意ではあるものの、記載していた方がトラブルを避けられるでしょう。
・退職手当
・ボーナスや臨時の賃金
・労働者が負担する食費や作業用具
・安全衛生
・職業訓練
・業務外の疾病や災害の補償
・表彰や罰則
・休職
参考:厚生労働省「就業規則を作成しましょう」

2.パートタイマーとは?

パートタイマーとはパートタイム労働法の対象者である「短時間労働者」です。「短時間労働者」は「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比し短い労働者」であると厚生労働省は定義しています。通常の労働者とは正社員や正職員などいわゆる正規型の労働者です。そして、定義に当てはまれば「アルバイト」「契約社員」「臨時社員」「準社員」すべてパートタイム労働者です。事業所に正規型の労働者がおらず、フルタイムに近い働き方をしている労働者を「通常の労働者」と定めています。

正社員とパートの違い

一般的な捉えられ方としてパートは主婦、アルバイトは学生などを漠然と指すことが多いのではないでしょうか。正社員とパートには雇用期間や給与、福利厚生などの違いがあるため、下記で説明します。

雇用期間

正社員とパートの大きな違いは雇用期間です。正社員は雇用期間に定めがない無期雇用契約です。事業主は正社員として雇った人を終身雇用することが多く、定年まで雇用されます。ただし、終身雇用は法律や規則で定められているわけではありません。パートは期間の定められている有期雇用契約が一般的です。

労働時間

労働基準法では正社員・パートにかかわらず原則として1日8時間、1週間に40時間を超えてはいけないとされています。正社員は労働基準法で定められている原則を超えない範囲で、会社の定めた所定労働時間で勤務します。一方、パートは基本的に正社員より短い時間です。また、パートは自身の都合にあった時間で働けて、より時間の融通が効きます。

給与・昇給・賞与

正社員は一般的に月給であることが多く、賞与なども支給されます。昇給や昇格の機会は年に1〜3回あり、長期間安定した収入を得ることができます。パートは基本的に時給であり、賞与なども支給されないことがほとんどです。昇給もほとんどせず、仮に昇給したとしても少額です。同じ企業で長く働く前提なら、正社員とパートでは生涯年収がかなり開くかもしれません。

福利厚生

正社員は社会保険・住宅手当・資格手当など福利厚生が手厚い特徴があります。パートは、一定の条件を満たしていなければ社会保険にすら加入できません。また、他の福利厚生も受けることができない場合があります。しかし、産休や育休に関しては労働基準法でパートでも取得できると定められているため、条件を満たせば取得できます。

正社員との格差はなくなった?

2020年4月1日から「パートタイム・有期雇用労働法」が施行され、正社員とパートの不合理な待遇差が禁止されました。この法律は「均衡待遇規定」に基づいています。均衡待遇規定とは不合理な待遇差がないかを判断し、差別的取り扱いを禁止するというものです。2021年4月からは中小企業にも適用されます。とはいえ、賃金や契約期間について労使の話し合いが必要になるため、まだあまり浸透していないことが現状です。

肝心なのは人の価値観

法律で禁止されてもすぐに改善できるものではありません。今まで正社員が一般的であった時代にできた企業内制度を改善しようと思っても、正社員側があまりよく思わないなど、さまざまな問題があります。また、家族手当や住宅手当などガイドラインに記されていないものもあり、すべてが等しく扱われるわけではありません。あくまでも不合理な格差をなくすための施策です。

3.パートタイム労働法について

パートタイム労働法の正式名称は「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」といい、平成5年に制定されました。短時間労働者の雇用環境を改善することが目的のため、頻繁に改正も行われています。具体的にどういう内容か詳しくみてみましょう。

パートタイム・有期雇用労働法

パートタイム・有期雇用労働法とは、正社員とパート・契約社員・派遣社員などの間で基本給や賞与などあらゆる不合理な格差を禁止する目的で制定されました。さまざまな形態の労働者が待遇に納得した上で働き続ける選択肢を与えるためのものです。企業は待遇差について説明を求められれば、待遇の内容や理由を具体的に説明する必要があります。

同一労働同一賃金

同一労働同一賃金とは、同じ会社で同じ仕事をする正社員とパートなど非正社員間の賃金格差をなくす考え方です。では、どのようなことに気をつければ不合理な待遇格差がなくなるでしょうか。厚生労働省が策定した同一労働同一賃金のガイドラインがあります。ガイドラインによると同じように働いているのに非正規社員という理由で、不合理に基本給を低く設定してはいけません。また、ボーナスを出さないなどの待遇差も認められません。さらに、収入面だけでなく各種手当に関しても不合理な差を設けてはいけません。ただし、待遇には細かいことまでは記載されていないため、使用者から説明する義務はありません。そのため、労働者から説明を求める必要があります。

4.労働条件通知書はパートにも必要?

労働条件通知書はパートやアルバイトなど短時間労働者にも必要です。雇用契約を結ぶならば、血の繋がりがあっても労働条件通知書を明示しなければなりません。また、短時間労働者を雇う時は「昇給の有無」や「退職金の有無」など追加で記載すべき項目もあります。最近は、労働条件通知書と雇用契約書を併合したものも増えています。

雇用契約書も作った方がよい理由

雇用契約書は義務ではないものの、事業主とパート間でのトラブルを回避するためにも作成した方がいいでしょう。労働条件通知書は、一方的に事業主が交付するものです。そのため、トラブルが起こるリスクを抱えています。それに対して雇用契約書は、双方が合意して署名・捺印を行います。お互いにパートタイマーの定義を理解しておらず、正社員とパートタイマーの間に不当な格差が開くといった社会問題になることを防ぎます。

雇用契約書を見直す必要性

2020年4月1日に同一労働同一賃金が施行されたことにより、雇用契約書を見直す必要が出てきました。以前までは正社員と同等の仕事をしているにもかかわらず、賃金や待遇が改善されないままのパートが多く存在していました。しかし、パートタイム・有期雇用労働法の施行により業績・能力・勤続年数などが正社員と同一である場合、雇用形態による待遇差が禁止されています。つまり、正社員と同等の仕事を任せる場合、待遇も同じにしなければなりません。違法行為を犯さないためにも、事業主側はしっかり把握しておきましょう。

パートタイマーの雇用契約書を発行する際の注意点

労働条件通知書として明示するだけでなく、双方が捺印・署名を取り交わす雇用契約書にも記載するようにしましょう。
まず、雇用契約書を発行する際、労働条件通知書で明示することを義務づけられている以下の15事項を記載します。
・パートタイム労働法施行規則では、15項目を労働者に対して明示しなければならない
・労働契約の期間
・労働契約を更新する場合の基準(労働契約を更新する場合があるものの締結に限る)
・就業場所
・従事すべき業務の内容
・始業及び終業の時刻
・所定労働時間を超える労働の有無
・休憩時間
・休日・休暇
・労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
・賃金の決定、計算方法、締め切り、支払い時期
・退職に関する事項(解雇の事由含む)
・昇給の有無
・賞与の有無
・退職手当の有無
・短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口

つぎに、上記15項目以外にも、義務ではないが表記した方が親切な項目です。
・退職金が支払われる労働者の範囲
・退職金の決定、計算および支払いの方法、時期
・臨時に支払われる賃金や賞与、最低賃金に関する事項
・労働者に負担させる食費、作業用品その他に関する事項
・安全および衛生に関する事項
・職業訓練に関する事項
・災害補償および業務外の傷病扶助に関する事項
・表彰および制裁に関する事項
・休職に関する事項

上記は必ずしも書面にする必要はなく口頭でもいいとされています。しかし、後日内容を再確認したときにトラブルを回避できることを踏まえると、なるべく書面にして明示したほうがいいでしょう。
参考:厚生労働省「パートタイム労働法」

5.まとめ

このように国は各種法制度の整備に着手しはじめ、パートと正社員との間にあった待遇の格差は少しずつ改善されつつあります。事業主がパートタイマーを雇用する際は、労働基準法やパートタイム・有期雇用労働法を遵守しながら、正社員との間に不当な格差が産まれていないか十分配慮することが必要です。また、事業主と労働者はトラブルにならないために雇用契約を確認し合うことが大切です。そのためにも、労働条件通知書と雇用契約書は、しっかり準備して漏れがないように用意しておきましょう。

HR-GET編集部

 HR-Get(エイチアールゲット)は、創業から30年以上にわたり、社会保険労務士の方や、企業の労務ご担当者様向けにシステムを開発・提供・サポートをしている株式会社日本シャルフが運営するWEBメディアです。
「人事、労務、手続き、働き方改革、トラブル」などに関するものをテーマとし、人事・労務に関わるビジネスに日々奮闘する、多忙な経営者や人事・労務の担当者に役立つ情報を提供します。

2021.09.15

70歳までの雇用に関する、人事制度の在り方。シニア世代の有効活用とは

 改正高年齢者雇用安定法は、65歳までの雇用確保義務に加え、70歳までの就業機会を確保することを努力義務としています。わが国では少子高齢化が進み、将来的には労働力不足も深刻になり、65歳を超えた人にも依存する社会が現実となってきます。

そこで今回は、70歳までの雇用を見据えた人事制度の考え方、シニア世代の有効活用についてまとめました。

目次

  1. 高年者が活き活きと働ける仕組み作り
  2. 社員全体の意識啓発
  3. 制度設計の考え方
  4. シニア活用のメリット
  5. まとめ

高齢者が活き活きと働ける仕組み作り

・やりがいある仕事、役割を提供

高齢者は知識・経験・技術・技能を持っているため、長年培った経験から先を見る力があります。高齢者に活き活きと働いてもらうためには、この強みを活かせる役割に就いてもらうことで、就業意欲も高まります。

・負荷のかからない職場環境作り

高齢者の強みを活かすには、起こりがちな弱みを補うことが大切です。
体力低下には機械化や自動化など、視力低下もデジタル化や拡大表示で補うことができます。通勤負担を軽減するための在宅勤務や時差出勤、直行直帰も有効な手段の1つです。集中力低下にはセンサーによる自動化を、作業スピードの低下には作業スピードをコントロールできる方法を取り入れることができます。

・多様性のある働き方を用意

複数の働き方が多様化するのも高齢者の特徴です。
フルタイム以外の選択肢を提供する場合、単にパートとしての働き方を提供するのではなく、午前中だけの勤務や午後だけの勤務、 週前半の勤務や週後半の勤務など、勤務形態の種類を充実させると効果的です。
高齢者の中には、早朝や夜間勤務を希望する高齢者もいるため、様々な勤務シフトを用意して選択できるようにすることも可能です。
多様な勤務形態は、育児中の社員が高齢者に業務を引き継いで、退社時間を早めることができる等、働き方改革に繋がります。

・みんなが納得する基準を明確に制度化

継続雇用となった高齢者の人事考課が行われないままで、処遇も一律ということになると、就業意欲の向上を妨げてしまうおそれがあります。
このようなことを防ぐために、仕事ぶりに応じた処遇が必要であり、貢献度を見える化することで、評価している企業もあります。
これらの仕組みは全員が対象となるよう、就業規則に明確に記載するなど、運用でカバーするのではなく、制度化することで公平制が増し、納得して働くことができるようになります。

社員全体の意識啓発

・高齢者に意識転換を促す重要性

高齢者雇用では、企業が真剣に取組むだけでは効果に限界があります。高齢者自身が意識転換することが何よりも重要となります。
高齢期は、体力や健康などの自身の変化のほか、会社・職場から求められる役割も変わってきます。自分の立ち位置の変化に気づき、その時に役割を果たせるよう、事前準備が必要となります。

・高齢者が受け入れられるような職場作り

高齢者と若手では価値観が違うこともあり、心理的距離が遠くなりがちです。それを防ぐために、会社や管理職がきっかけや仕掛けを作って距離を縮め、相互理解が進むようにすると良いでしょう。
業務効率化を図るためにタブレットを導入した会社の中には、若手がベテランに使用方法を教えているところもあります。教わるだけだった若手が教えるという立場を経験し、ベテランの苦労を知るだけではなく、ベテランにとっても若手の強みを理解することができ、ともに距離が近くなったということもあります。
調査によると、高齢者と仕事をした経験がある若手・中堅は、高齢者に対する評価が高いという結果もでています。

制度設計の考え方

高齢者の社員に戦力として活躍してもらうためには、「何を期待しているのか」をしっかり伝え、その「仕事ぶりを適切に評価し賃金を支払う」ことが不可欠となります。
各企業に合った最適な賃金・評価制度の作成に至るまでの流れは以下の通りとなります。

① 「どのように活躍してもらうのか」を明確化

高齢者の社員に期待する「業務内容や責任の程度」、「働き方」の2つの視点で考えていきます。

②雇用制度の検討

定年制度延長や定年制度の廃止、継続雇用制度から、活用方針に対応した制度を検討します。

③賃金・評価制度の整備

採用した雇用制度に対応した制度を検討します。

シニア活用のメリット

①経験や技術が豊富で即戦力になり、人材育成のコスト削減につながる

自社の定年退職者の場合、育成コストはゼロでそのまま同じ仕事をしてもらうことができます。

②ノウハウを共有することで、若手の育成や成長につながる

経験に基づいた知識を活用し、若手の育成・指導をしてもらうことができます。

③労働体制や評価を柔軟にすることで会社の多様化につながる

年齢に関係なく、個人の能力や成果を基準に処遇していくことができれば、将来的に会社の多様性を高めることにつながります。

まとめ

少子高齢化が進んで労働人口が減少する今、働く意欲と能力のある高齢者の積極的活用は必要不可欠といえるでしょう。高齢者の雇用の在り方、賃金設計など、新しい時代に適した仕組みを制度化していくことが求められます。
また、若手社員の中には、高齢者雇用の拡大は自分の給与が上がらない原因と受け取り、不満の原因になることもあります。
このような現実を踏まえ、最適な制度構築と運用を考えていきましょう。

筆者紹介

社会保険労務士法人 HALZ(https://halz.co.jp/

「外部人事部」をコンセプトに幅広い人事領域をサポートする社労士法人です。企業人事の実務経験、社労士として数々の企業様への労務コンサル経験をもとに、実務家目線に立ち企業様をサポート。給与計算や手続きを通じ把握した労務課題への改善提案、さらに採用支援や人事制度の導入提案も手掛け、企業人事の皆様を幅広く支援します。

2021.09.06

【企業担当者向け】労働条件通知書とは?2024年4月の改正内容についても解説!

雇用主が労働者と雇用契約を結ぶ際、労働条件通知書を発行しなければなりません。

もし、労働条件通知書を発行せずに雇用契約を結ぶことは違法です。

また、雇用契約書を労働条件通知書と勘違いしている方も多く、「大丈夫」と思っていても知らず知らずのうちに労働基準法に反している可能性もあります。

本記事では労働条件通知書について、雇用契約書との違いや書き方を説明します。労働基準法を守り、雇用主と労働者の間でトラブルになるのを防ぐことに役立ててください。

更新日:2025年1月22日

社労法務システムの紹介

【目次】

  • 何のために発行するのか?
  • どんな人が対象者となる?
  • 雇用契約書は必須でないが作成すべき
  • 労働条件通知書明示のタイミング
  • 絶対的明示事項
  • 相対的明示事項

【2024年4月】労働条件明示事項が改正

  • 電子化のための要件

労務管理システムで入社手続きをもっと楽に

まとめ

労働条件通知書とは

労働条件通知書とは、事業主が労働者と雇用契約を結ぶ際に交付する、雇用条件を明示した書類です。

労働基準法により、雇用契約の締結に当たって、労働条件通知書の交付が義務づけられています。たとえ、事業主と労働者に血の繋がりがあったとしても、雇用契約を結ぶなら労働条件通知書を発行しなければなりません。

労働条件通知書には決まった書式があるわけではありませんが労働期間や勤務時間、賃金など、明示しなければならない内容が定められています。発行する際は厚生労働省のホームページに用意されているひな形を参考にしたり、労務管理システムを利用するとよいでしょう。

何のために発行するのか?

労働条件通知書は、労働者が企業で働くうえで必要な情報を把握できる書類です。

労働者にとって賃金や契約期間、仕事をする場所などの労働条件は人生に関わる重要な情報です。もちろん求人募集や面接の際にもその話はしているでしょう。しかし、口約束だけでは誤解があり、トラブルになっても証明は困難です。

書面にすることで、労働者の立場を守り、企業と労働者が安定かつ良好な関係性を保つことができます。トラブルを未然に防ぐためにも、労働条件通知書を必ず作成しましょう。

どんな人が対象者となる?

労働条件通知書は企業が労働力として雇う、すべての人材に発行しなければなりません。正社員、契約社員、パート、日雇い労働者問わずすべての人が対象です。

基本の就業時間や休日など共通する部分があったとしても人によって就業時間・就業場所が違うため、各労働者一人ずつに発行すべきです。

雇用契約書との違い

労働条件通知書のほかに事業主が労働者に交付する書類として雇用契約書があります。

労働条件通知書は企業から労働者に一方的に交付される書類であるのに対して、雇用契約書は両者が同意のうえで捺印と署名を行う書類です。

労働条件通知書の交付は労働基準法で義務として定められているため、怠っていれば罰則があります。しかし、雇用契約書は民法で推奨されてはいるものの、義務ではなく罰則もありません。雇用契約書は2部作成し、雇用者と労働者が署名・捺印した後、双方それぞれで保管します。

雇用契約書は必須でないが作成すべき

雇用契約書は法的に作る義務もなく、罰則もありません。

しかし、労働条件通知書だけではトラブルが発生した時に「言った」「言っていない」などの争いになるため、雇用契約書は作成することをおすすめします。雇用契約書は企業と労働者双方の合意した詳しい条件などが書面として残されているため、労働条件通知書よりも優れた証拠になるでしょう。

ただ、労働条件通知書と雇用契約書では内容の重なる部分も多くあります。そのため、労働条件通知書と雇用契約書を兼用する企業が増えています。

労働条件通知書の書き方

労働条件通知書の書き方について詳しく説明していきます。

労働条件通知書明示のタイミング

労働基準法第15条第1項では以下のように規定されています。
「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」

これは具体的には以下のような場合です。

  • 新規で労働者を雇入れる時
  • 有期契約労働者の契約更新時
  • 労働条件が変更になった時

絶対的明示事項

なかでも以下のものに関しては書面の交付による明示をしなければなりません。
これは絶対的明示事項と呼ばれています。

抜けのないよう、具体的な数字や決まりを明確にすることがポイントです。

引用: 労働基準法|e-Gov法令検索

契約期間

労働の契約期間の有無、つまり契約期間に定めがあるのか、ないのかを記載することが必要です。

期間に定めがある場合は、具体的に契約期間の日付を記載します。また、契約更新の有無も契約期間のカテゴリーに含みます。
自動更新もしくは更新に条件がある場合は、その能力や実績・勤務態度などの判断材料も記載しておきましょう。

就業の場所及び従事すべき業務

就業の場所は実際に労働者が働く場所を記載します。

一般的に住所や店舗の記載をしますが、働く部署を記載しても構いません。将来的に就業する場所が変わる場合も、最初に就業する場所を記載しておきます。

従事すべき業務内容は「総務業務」や「経理業務」など実際にどのような業務を行うのかを具体的に記載します。複数の業務に従事する場合、複数の業務を並列で記しても構いません。就業場所も業務内容も将来変わる可能性があるなら、その旨を記載しておく方が親切です。

始業及び終業の時刻

始業および終業時間とは文字通り、業務の始まる時間と終わる時間です。

もちろん、休憩時間と所定労働時間の有無も記載します。もし業務前に朝礼などがある場合は、朝礼を含めた実際に働く時間を記載しましょう。

サービス業などシフト制やフレックスタイム制で時間がバラバラの場合、それぞれの始業、終業時間を記す必要があります。勤務規定を別にもうけて参照するように記載しても構いません。

休日・休暇

労働基準法では法定休日が定められており、最低週に1回、4週間で4回の休日付与が必須です。

実際には週休二日制も広まり、それ以上に休日をとる企業も増えています。法定休日を超える分の休日は法定外休日と呼ばれます。1年単位の変形労働時間制を採用している企業は年間の休日を記載してください。

また、有給休暇の取得の有無も記載します。労働者が6ヶ月以上継続勤務した場合、年10日の有給を与える義務が生じます。勤務日数の少ないパートであっても、勤務日数に応じた有給を与えなければなりません。

働き方改革により、2019年4月から全ての企業において、年10日のうち5日は時期を指定して必ず取得させなければならなくなりました。

賃金

賃金の事項では賃金の締め日や支払日、支払い方法を記載します。

労働条件通知書には、諸手当の額と計算方法もそれぞれ記載しなければなりません。

まず、最低賃金を把握し、具体的な金額を記載します。最低賃金は、最低賃金法で定められている賃金の下限です。各都道府県によって異なり、厚生労働省のホームページで確認ができます。

つぎに、残業の割増賃金や深夜残業なども記載しておきます。割増賃金率は残業の種類によって異なるため、それぞれを細かく記載することが必要です。

退職に関する事項・その他

退職に関する事項では定年制度の有無(60歳以下の設定をしてはいけない)のほか、再雇用制度の有無や労働者が退職する際の退職手続き方法を記載します。

たとえば、退職する日の何日前から届出を出すかなどについての記載です。

また、そのほかに記載しないといけない事項として社会(雇用)保険の有無があります。

相対的明示記載事項

対して、労働条件通知書には口頭の明示でもいい相対的明示記載事項があります。必ずしも書面に記載する必要がないとされていますが、トラブルが後から起きるのを防ぐためにも、就業規則などに記すことが望ましいでしょう。


相対的明示記載事項について、厚生労働省のサイトを参考に下記で列挙します。

  • 昇給に関する事項
  • 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、対象手当の決定、計算・支払いの方法、支払いの時期に関する事項
  • 臨時に支払われる賃金・賞与に関する事項
  • 労働者に負担させる食費・作業用品その他に関する事項
  • 安全衛生に関する事項
  • 職業訓練に関する事項
  • 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
  • 表彰、制裁に関する事項
  • 休職に関する事項

参照:厚生労働省「採用時に労働条件を明示しなければならないと聞きました。具体的には何を明示すればよいのでしょうか。」

【2024年4月】労働条件明示事項が改正

前述した絶対的明示事項において、「労働基準法施行規則・「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに 関する基準」の改正に伴い、2024年4月より労働契約の締結・更新のタイミングの明示事項が一部追加となりました。

改正項目は以下の通りです。

これらの明示義務に違反した場合、労働基準法120条により30万円以下の罰金を科せられますので注意しましょう。

労働条件通知書の電子化

これまで労働条件通知書は書面での交付に限られていました。

しかし、近年インターネットが普及し、企業にもIT化が進んだことを受け、2019年4月、一定の要件を満たせばメールやSNSでの交付も可能になりました。

電子化のための要件

労働条件通知書を電子化する為には、いくつかの要件があります。

  • 労働者本人が希望していること
  • 本人のみが確認できる状態であること
  • 出⼒して書面を作成できること
また、送付後は到達しているかを労働者に必ず確認し、できるだけ出力して保存するように伝えましょう。


尚、電子化の場合も労働者への明示事項に変更はありません。

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今回お話したような労働者に提示する一連の書類についても社労法務システムであれば、システムに登録したマスタ情報をもとに自動作成が可能です。
記載方法に迷ったり、絶対的明示事項を書き漏れたりする心配がありませんので、安心してご利用いただくことができます。

マスタ情報を一元管理し、業務効率化を図りませんか?

関連記事:社労法務システム+Esia-Zero(イージア・ゼロ)とは? 給与計算・社会保険手続きを一元管理できる労務システムを詳しく解説!

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まとめ

労働条件通知書は労働基準法による義務として、事業主と労働者間で新たに雇用契約を交わす際に発行しなくてはなりません。

発行しないと違法になり、トラブル発生の元になるだけでなく社会的信用を失ってしまいます。
大切なことは企業も労働者もしっかりと把握することです。両者がルールを把握することで、企業だけでなく社会全体で改善が進みます。

労働条件通知書は忘れずに発行するようにしましょう。

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HR-GET編集部

 HR-Get(エイチアールゲット)は、創業から30年以上にわたり、社会保険労務士の方や、企業の労務ご担当者様向けにシステムを開発・提供・サポートをしている株式会社日本シャルフが運営するWEBメディアです。
「人事、労務、手続き、働き方改革、トラブル」などに関するものをテーマとし、人事・労務に関わるビジネスに日々奮闘する、多忙な経営者や人事・労務の担当者に役立つ情報を提供します。

2021.09.01

【企業担当者向け】休業補償とは?計算方法や休業手当との違い

従業員が業務中のケガや病気で仕事を休まないといけなくなったときに、生活を守るため支給される休業補償。
実際に何かあった場合、休業補償に関する知識がなければ困ることになります。
本記事では、休業補償と合わせて、混同しやすい休業手当についても、定義や計算方法をご紹介します。
もしものときに備えて、正しい知識を身につけておきましょう。 
更新日:2024年10月28日

【目次】
  • 休業補償とは
  • 休業手当とは
  • 休業補償の基礎計算
  • 休業補償給付は給付基礎日額を元に計算される
  • 平均賃金の計算方法
  • 少し複雑な日雇い労働者の平均賃金の計算方法
  • 休業手当の計算例

まとめ

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休業の定義

「休業」という言葉は、単に「業務を休む」と思っている方が多いのではないでしょうか。
もちろん間違ってはいませんが「休業」には明確な意味があります。

休業の定義は「もともと出勤だったが労働できずに休む」こと、具体的には「労働者本人に働く意思や能力があるのに労働できないこと」を指します。
代表的な休業は業務中のケガや病気・産前産後・育児・介護などです。天災時や会社側の都合で労働者を休業させるケースもあります。

また、休業の種類によって労働していない期間の補償内容はさまざまです。

休業の他に「休暇」という表現もありますが、休業と休暇は労働基準法で明確に区分されていません。

似たような言葉である休日は「所定労働日ではない日の休み」を指し、休業や休暇と全く別の意味を持ちます。

休業補償と休業手当の違い

労働できない期間を補償するために「休業補償」と「休業手当」という2つの制度があります。この2つには類似点が多いものの、適用されるケースや補償内容が全く違います。
労働基準法でも違いが明記されているため、休業する際は自分がどちらに該当するかをしっかりと見極めなければなりません。

たいてい休業補償は「業務上のケガや疾病」で支払われるケース、そして休業手当は「会社都合の休業」で支払われるケースです。補償額もそれぞれ異なり、休業補償の場合は給与の60%が支払われます。一方、休業手当の場合は給与の60%〜100%が支払われます。

休業補償とは

休業補償とは、労働者が業務中または通勤中にケガをしたり、病気にかかったりした場合に支払われる補償です。
休業補償は、労働基準法第75条1項で次の通りに定められています。
「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。」

また、労働基準法第76条1項では「労働者が前条の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の百分の六十の休業補償を行わなければならない。」と定められています。

つまり、業務によってケガや病気を負ってしまった場合は、従業員に平均賃金の60%を支給します。なお、休業補償は労災保険から支給されるため、課税の対象にはなりません。

休業手当とは

休業手当とは、会社の都合により労働者を休業させた場合、義務として支払わなければならない補償です。
休業手当は、労働基準法第26条で次のように定められています。
「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。」

「使用者の責に帰すべき事由」とは一般的に、経営不振や設備の不備など、事業主の都合によるものを指します。ただし、自然災害でオフィスが使えなくなるといった不可抗力によって仕方なく従業員を休業させる場合は「使用者の責に帰すべき事由」に該当しません。

休業手当では事業主が平均賃金の60%以上を支払います。労働に対する賃金として扱われるため、課税の対象になります。


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休業補償の計算方法

休業補償の計算をする前に、従業員が給付対象であるかどうか確認をしましょう。
休業補償を受給するためには3つの条件を満たす必要があります。
  • 療養中であること。治癒後の外科処置で休む期間は補償期間から外れます。
  • 働けない状態であること。軽度な作業に参加できる場合は支給する必要はありません。
  • 賃金を受け取っていないこと。事業主が従業員に賃金を支払っていると支給する必要はありません。

休業補償の基礎計算

休業補償給付の計算方法は「給付基礎日額の60% × 休業日数」です。
また休業補償では、休業補償給付とは別に「休業特別支給金」が支給されます。この計算方法は「給付基礎日額の20% × 休業日数」です。
つまり、休業1日につき給付基礎日額の80%(休業補償給付の60%+休業特別支給金の20%)が支給されます。
ただし、所定労働時間の一部分で労働した場合は、その働いた分の金額が控除されます。

休業補償給付は給付基礎日額を元に計算される

給付基礎日額とは、労働基準法の平均賃金に相当する額を指します。
休業補償の金額を計算するためには、一日の平均賃金を算出しなければなりません。
平均賃金とは、労働基準法等で定められている手当や補償、減給制裁の制限額を算定するときなどの基準となる金額です。

平均賃金の計算方法は後ほどお伝えします。

算出した平均賃金を元に「× 0.6=補償給付」「× 0.2=特別支給金」を算出します。
なお、休業4日目以降、労災保険から支給される給付額1日当たりで算出される1円未満の端数は切り捨てです。

休業手当の計算方法

休業手当の計算方法は「平均賃金 × 60%以上×休業日数」です。

次に平均賃金の算出方法を解説します。

平均賃金の計算方法

平均賃金は「事由発生した日以前3ヶ月間にあたる賃金の総額 ÷ 3ヶ月間の暦日数」で算出します。

例えば3ヶ月の賃金総額が60万円で3ヶ月間の暦日数90日の場合、一日の平均賃金は以下のように計算されます。

60万円 ÷ 90日=6,666円66銭 
※1日の平均賃金を算出し、銭未満の端数が生じたときは切り捨てる(昭22.11.5基発232号)

原則3ヶ月間の暦日数が用いられ、日給制、時間給制、出来高払制、請負制の場合は原則での金額と3ヶ月間の労働日数で計算される最低補償額とを比べ高い方を選びます。

賃金締切がある場合締切日ごと に、通勤手当、皆勤手当、時間外手当など諸手当を含み税金や社会保険料などの控除をする前の賃金の総額により計算します。平均賃金には、年次有給休暇の賃金、通勤定期券代、昼食料補助、皆勤手当、確定しているベースアップも含まれます。ただし、臨時的に支払われた賃金(結婚手当、私傷病手当、加療見舞金、退職金など)や3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賞与、その他特別に法令や労働協約で定められていない現物給与は含まれません。

直前3ヶ月が適用されない例

平均賃金を計算するためには、休業事由が発生した日以前3ヶ月を合計した賃金が必要です。

しかし、次の場合は直前3ヶ月が適用されません。

  • 勤務期間が3ヶ月に満たない場合
  • 試用期間が含まれる場合
  • 出産の前後の休業期間を含む場合
  • 育児や介護による休業期間を含む場合
  • 業務上のケガや病気を療養するために休業した期間を含む場合
  • 使用者の責に帰すべき事由を含む場合

上記の期間を控除せずに計算すると、平均賃金が不当に低くなる可能性があります。

参考:厚生労働省神奈川労働局 「平均賃金について【賃金室】

少し複雑な日雇い労働者の平均賃金の計算方法

日雇い労働者の場合、日によって勤務先が異なることもあるため、一般的な平均賃金の計算方法とは別の計算式を使います。
日雇い労働者で勤務先が1ヶ月以上同じ場合は「1ヶ月間に支払われた賃金総額 ÷ その間の総労働日数 × 73%」で計算。また、勤務先が違った場合は「当該事業者で1ヶ月以上働いた同種労働者の1ヶ月間にあたる賃金総額 ÷ その間の同種労働者の総労働日数 × 73%」で計算します。
どちらも該当しない場合は、労働基準監督署などに問い合わせる必要があります。

休業手当の計算例

休業手当の計算例を、以下の条件を元に算出します。

休業理由:会社都合
休業期間:7月5日〜7月30日
所定労働日数:20日
賃金の締め日:月末
直前3ヶ月の賃金:6月末30万円、5月末29万円、4月末32万円の合計91万円
直前3ヶ月の暦日数:4月〜6月で合計91日間

まず平均賃金の計算をする

直前3ヶ月の賃金(91万円)÷ 直前の3ヶ月間の暦日数(91日)=平均賃金1万円

次に1日あたりの休業手当を計算する
休業手当の補償額は、平均賃金60%〜100%です。
ここでは、最低補償額である60%で計算します。
平均賃金(1万円)× 60%=6,000円
つまり、一日あたりの休業手当は6,000円です。
最後に休業期間の休業手当の総支給額を計算する
一日の休業手当(6,000円)× 所定労働日数(20日)=12万円
つまり、休業期間に支給される手当は12万円です。

休業手当を算出するために準備する項目は「直前3ヶ月の賃金」「直前の3ヶ月間の暦日数」「休業期間中の所定労働日数」と覚えておきましょう。

まとめ

休業とは、労働日なのに働けず休むことです。
その期間の生活を補償するために、休業補償や休業手当があります。
2つの制度は労働者を守るという重要な役割を果たしています。
人事に携わる者として万が一に備え、休業や補償制度、補償額の計算方法は知っておかなければなりません。絶対的な安全が確保されない現代だからこそ、休業に関する正しい知識は個人だけでなく企業も把握しておきましょう。


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